異呆人

毒にも薬にもならない呟き

世界は誰かの仕事で出来ている

前にも書いたような気がするが、数年前から世の中のいたるところに「人の手」があることを感じてしまう。

私は以前に建築資材を販売する商社に勤めていたことがある。

だから建設中の工事現場などを見ると、「何が建つのかな」ということ以外に、一体これが完成するまでにどれくらいの人の手がかかるかなと考えてしまう。

例えば建物の場合、材料のメーカーがあり、それを販売する会社があり、材料を加工する会社があり、実際に建てる会社がある。

現場によってはその仕事の元請けのゼネコンがいたり、大きな資材を運ぶための専用の運送屋がいたり、塗装をする会社がいたり、内装をする会社がいたりする。

もちろんそれ以外にも書き切れないほどの人の手を経て、一つの建物が出来上がる。

中には「それって必要なの?」と思うような要素もあるわけだが、概ねそれらのどれが欠けても不十分だし、同時にどれも一部でしかない。

すごくミクロなレベルだが、自分の存在が世界のほんの一部であることを認識させてくれる。

自分に見えている範囲が世界のほんの一部であることを認識させてくれる。

実際には見えない多くの「人の手」が関わっているだろうことを想像してしまうのである。

 

先日、取引先の新店オープンの手伝いに行ったのだが、オープン日にも関わらず準備がまったく終わっておらず、普段ならしないことまでバタバタと手伝った。

その日、私は商品棚への品出しとJANコードの貼り付けを手伝った。

JANというのはバーコードの一種である。

普通のバーコードは商品の外装に印字されている。

それをレジに通すわけだが、あれも初めから値段が入っているわけではなく、「このバーコードの商品はいくら」というのを店に来てから登録している(たぶん)。

だから特売のときなどは個別に登録されている値段を変える(はずである)。

これは普通の店の話で、中には大きな小売店の中に別の店が入っていることがある。

例えば、スーパーの鮮魚コーナーを運営しているのが、スーパーではなく外部の魚屋さんであるような場合である。

その場合、魚の売上は魚屋さんに入るのだろうが、レジは魚屋のレジではなくスーパーのレジを通すことになる。

だからスーパーのレジを通ったときに「いくら」というのが表示され、それがスーパーではなく魚屋さんの売上であるとわかるように別のバーコードを貼らなければならない。

私も普段使っているわけではないので半ば知ったかぶりだが、この魚屋さんのバーコードがJANである。

 

私は値段の登録されたバーコードを、貰ったリストと突き合わせてペタペタ貼っていただけなのだが、貼り間違えると大変なので些か緊張した。

似たような商品がたくさんあり、慣れている人なら見たらわかるのだろうが、私にはとても判別できない。

まして出力されたJANに印字されている値段がおかしいことなど気付きようがない。

いや、実際そういうことがあって、同じように手伝いに来ていたメーカーの人はすぐに気付くわけだが、私は何の疑念も抱かずにJANを貼っていた。

そしてJANを貼りながら、一般の人の多くは店に同じように並んでいる商品の中に、別の店が売っている商品があることなど気付かないだろうなと思った。

私も仔細に見れば気付くが、普段の買い物でそんなことは気にしない。

たまに商品に関する質問をして、「すみません、こちらはあちらの店の商品でして…」などと言われて「あぁそうなのね」と思う程度である。

 

この前、某大手量販店でエアコンを買ったときも、取付工事は当然ながら別の業者だった。

工事業者というより、たぶん街の電気屋さんだった。

ああいうところはどうやって商売が成り立っているのだろうかと思っていたが、なるほどそうやっていろんな下請けもして、しぶとく生き残っているのである。

それから昨日スーパーで買った野菜もJANが貼ってあった。

農家の直販スペースのようだったので、売上をスーパーとは別にしているのかもしれない。

包装が若干適当だったが、農家のおばちゃんが手で野菜を袋詰めしてセロテープで止めているところを想像して、まぁ仕方ないなと思うことにした。

世の中の物事の多くには、傍目に見えるよりもっと多くの人が関わっている。

自分たちが知らずに過ごしているだけで。

だから自分に見える範囲で何か不都合があったときに、必要以上に追及するのも大人気ないなと思うことがある。

不都合を起こしたように見える対面している本人に、実はまったく非がないこともあるだろう。

諸々の事情を考慮すれば避けようのないこと、悪意のない小さなミスの積み重ねであることもあるだろう。

人の手の入ることなのだから、100%ミスがないとは言えない(ミスを避ける努力は必要である)。

ちょっと想像力を働かせることで、「次から気をつけてね」と笑って許せることもあるかもしれない。

 

さておき、今朝乗った飛行機で隣の人が仕事の資料を広げていた。

チラと目に入った文字に「捜査資料」とあった。

あぁ警察の人なんだね、ほんと、世の中いろんな仕事をしてる人がいるよね。

と思って流したいところだが、人目があるところで捜査資料を広げるのはいかがなものか。

それ、オープンにできないこととか、個人情報とか載ってるんじゃないの?

ほら、次のページ、聴取メモって書いてあるよ。

まぁこう考えると、人の手の入ることとはいえ、笑って許せないやっちゃいけないこともたくさんあるわけで、皆さんお仕事をされるときは十分気をつけてください。

これは自分に返ってくるブーメランでもあるけれど。