異呆人

毒にも薬にもならない呟き

僕はロボット

体調が悪い。

朝、急に身体がガタガタと震え出して目が覚めた。

身体のうちに熱がこもるような感覚。

筋肉と内臓が痺れるような感覚。

いずれも発熱の兆候である。

ただ高熱ではないなとわかる。

実際に計ると37℃程度の微熱。

仕事はできる。

しかし悪化していきそうな雰囲気がある。

ちょうど翌日から出張だったから持っていくものを取りに行かなければならないし、出なければならない会議もある。

しばらくあれこれ考えたが普通に出社することにした。

悪化したら早退すればいい。

長い通勤時間が苦痛ではあったが。

 

普通に仕事をして帰宅すると、熱が上がっている感覚があった。

計ってみると、予想通り38℃近くある。

食事をしたあと、家事一切を妻に任せて横になる。

食欲はある。

鼻や喉の痛みはなく、風邪らしい症状はない。

発熱とそれに伴う筋肉と内臓の炎症だけである。

これまでに同様の状態になったのは、オーバーワークだったときだけである。

すぐには休めないが1泊2日の出張を乗り切ればゆっくりできる。

熱が下がらなければ、土曜日には病院に行こう。

そんなこんなを考えながら、とりあえず風邪薬で誤魔化して眠りに落ちる。

 

スポーツをやっていたせいか、私は身体のサインには敏感な方だと思う。

例えば熱があるかどうかは体温計がなくてもわかるし、大体何度くらいかも計らなくてもわかる。

例えば運動後に身体が痛んだとして、それが骨なのか筋肉なのか腱なのか、放っておいても問題ないのか医者にかかるべきなのか、感覚的にわかる。

そういうとき、私は自分が大きなロボットになったイメージを抱く。

「今、胃から異常を報せるエマージェンシーが発せられています。すぐに担当者に状況を確認させます」、「よくある軽微な不具合だと判断したので通常運転を続けます」みたいなやり取りが身体の中で行われているのである。

ときには「火の手が上がっています!我々ではどうにもならないので、至急運転を止めて専門家の指示を仰いでください!」みたいなこともある。

1人の人間というのは部分部分が有機的に繋がった大きなネットワークのようだと思うので、沢山の部品で動く精密なロボットだと考えることは、あながち大きく外れたことでもない気がする。

 

私は幼少の頃から自分のことをそんな風に思っているところがあった。

幼い頃の私はとても記憶力が良かった。

理解も早く、勉学がよくできた。

特別な教育を受けたことはない。

親も、父親は世間的には無名の大学を中退しているし、母親は高卒である。

勉学は得意でないし、教育熱心でもなかった。

周りからはとても不思議がられた。

どうやって勉強しているのか、しきりに聞かれた。

私の住んでた地域にはよく通信教育の進研ゼミのDMが投函されていて、「成績優秀な子は実は進研ゼミをやっている!」みたいな漫画が入っていたので、何らかそういう秘策があると思われたのかもしれない。

実際には学校の授業以外で勉強したことはないし、なんなら宿題もよく忘れる褒められた生徒ではなかった。

どうやって勉強してるのか聞かれても答えようがない。

でも「何もしてないよ」などと言うと、ますます怪しまれたりするのだからたまったものではない。

 

逆に私からすれば、周りがどうして同じようにものを覚えられないのか不思議だった。

見て、聞いたことを覚えるだけである。

そんなに簡単に忘れないだろう。

「教科書の何ページ目のこのあたりに書いてあるよ」とか「一昨日の授業で先生が言ってたよ」とか、すぐ出て来るのが当たり前だと思っていた。

自分と周囲と何が違うのか。

いろいろ考えた結果、小学生の私は自分が実はロボットなんじゃないのかと考えるようになった。

精巧に作られたロボットで、本物の私が産まれてからのどこかの段階ですり替えられ、記憶を移植されているのである。

目のカメラでスキャンして画像を読み込み、頭の中のCDに(当時はCDが最先端の記録媒体だったと思う)データが保管されるのである。

だから他の子が忘れるようなことも覚えているのだ。

そう考えた。

だからときどき何か思い出せないことがあったときは、頭の中のCDに記録された情報を検索するイメージを思い描いた。

頭の右側にスイッチがあり、そこを押すと高速でデータ検索を始めるのだ。

それでも思い出せないときは、きっとデータが正しく保存されなかったのだと思うことにした。

まぁ所詮は小学生の発想なのだが、私はこの発想が結構気に入っていた。

だから今でもそんな風に考えることがある。

そうやって自分をロボットのように考えると、自分自身を客観視して見ることもできた。

自分というものを少し離れたところから眺めるきっかけだったかもしれない。

 

さておき、この記事の途中までを午前中に出張中の飛行機内で書いていたのだが、夕方になって体調がさらに悪化した。

熱が異常に上がって、身体の機能が全面的に停止している。

異常事態を知らせるアラートが頭の中で鳴り響く。

飯を食ってから薬を飲もうと思ったが、あまりにしんどすぎてカップ麺のうどんにお湯を注いだところで力尽きた。

そこから高熱に悶絶しながら寝たり起きたり。

やっとこさ意識がまともになったところで薬に手を伸ばす。

薬が効いて熱が下がれば、なんとか普通に動けるようになった。

やはり症状は高熱だけか。

車を運転するので眠気が心配だが、解熱剤で熱だけ下げていればなんとか保ちそうである。

さて、もうちょっとだけ我慢して動いてもらいますかね。