異呆人

毒にも薬にもならない呟き

秋の夜はさらに涼しく 〜百鬼夜行シリーズ〜

今週のお題「読書の秋」

 

百鬼夜行-隠-』、『百鬼夜行-陽』:京極夏彦

 

この秋読みたいオススメの本というか、積ん読になっていてそろそろ読んでおかないといけないなと思っている本である。

通称「百鬼夜行シリーズ」の登場人物たちが出てくる短編集。

シリーズを読んでいなくても楽しめるのかもしれないが、やはり読んでいた方が面白いだろう。

百鬼夜行シリーズ」はミステリーだが、この短編集は怪奇調というか、「世にも奇妙な物語」みたいな雰囲気である。

怪談噺と言えば暑い夏の夜を冷んやり過ごすためのものだが、別に怪談噺みたいなおどろおどろしいものではないので、秋の夜長に虫の音でも聞きながら読むにはちょうどいいかもしれない。

 

京極氏と言えば、この「百鬼夜行シリーズ」が最も有名である。

シリーズ最初の作品「姑獲鳥の夏」は、確か映画化もされていたはずだ。

私は妖怪物だと思って、最初はまったく手を出さなかった。
読むきっかけになったのは、昔、mixiのグループで森博嗣氏好きのオフ会に参加したとき、森氏を好きな人に京極氏を好きな人が多かったからである。
勧められ、物は試しとばかりに読んでみたが、これが面白かった。
人によって合う合わないはありそうだが、私の趣味にはドンピシャだった。
 
あらすじをざっくり書くと、古書店京極堂」の店主であり、陰陽師でもある中禅寺秋彦が、身の回りで起こる不可思議な事件の謎を快刀乱麻に解き明かしていく、といったものである。
なんかこれだけ書くと、伝奇もののファンタジーか、ただの探偵ものといった雰囲気になってしまう。
もちろん全編に不穏な空気が漂うし、「妖怪」の姿も見え隠れする。
しかしこの物語の面白さの真髄はそこにはない。
「妖怪」の姿を、ときに民俗学の知見を交えながら解き明かし、どこまでもロジカルに謎を解体していくところが抜群なのである。
ときどき主人公の中禅寺が呟く決め台詞(?)、「この世には不思議なことなど何もないのだよ」が、しびれるくらいカッコいい。
そしてこの台詞が、作品の真髄を端的に表していると言っていいだろう。
 
誰が読んでも面白いと思うのだが、ロジカルゆえにときに冗長。
長い薀蓄とかが好きでない人には向かないかもしれない。
あと、1作品が長い。
森氏と並んで、文庫本が立方体になる「箱本」の作家である。
でも、面白い。
あと、登場人物も魅力的。
私は中禅寺が一番好きだが、破天荒な天才の榎木津や、ハードボイルドな木場も好き。
今回冒頭に挙げた2作もそうだが、スピンオフもいくつかあり、まだ読めていないので読んでみたいと思っている。
いろんな小説を読んでいると、私はこの手の「超有能だけどやる気がなく、巻き込まれる形でトラブルに関わってあっさり解決する主人公」が活躍する物語が好きなんだなと思い知る。
いや、むしろそんな人間になりたい。