異呆人

毒にも薬にもならない呟き

シンパシー②

シンパシー - 異呆人

 

 「私、朱天ちゃんのこと、好きだよ」

お開きになった職場の飲み会。

席を立った私に向かって彼女は言った。

一瞬、目が合う。

「おぉ!なんですか?突然の告白!」

「ダメですよ、朱天さんは〜。もう結婚したんだから。っていうか、Xさんも結婚してるでしょ」

冗談に反応して周囲が茶化す。

それを抑えるように「わかってるよ、俺もXちゃんのこと好きだから」と、私は冗談めかして言った。

アルコールが回っているせいだろう。

お互い、どれだけ冗談で、どれだけ本心か。


ときどき二人でランチを食べに行き、他愛ない話をする。

家での愚痴や仕事の愚痴や、非生産的で益体ない話ばかりだ。

一緒にいて楽しいとか嬉しいとかではない。

漂うのはアンニュイな空気で、笑い声より溜め息が多い。

世の中にはどうにもならないことがたくさんあって、それらを二人ともどうするつもりもない。

拒絶するより受け容れることの方が難しい。

あるいは、受け容れることの方が痛みを伴う。


物分かりが良く、リアリストであり、前向きな思考を持っていない。

そんな嫌な共通点が、膿んだ空気と親近感を生む。

似ているから、光の当たる部分より影に目がいく。

お互いの影がよく見える。


大切な人ではない。

例えば妻なら、自分がどうあっても生きていてほしいと思う。

彼女の場合、むしろ「一緒に死んでもいいかな」と思う。

何もかもがめんどくさくて嫌になったら、そういうのもロマンティックかもしれない。

まぁ、絶対にそんなことは起こり得ないが。