異呆人

毒にも薬にもならない呟き

エグゼクティブには一生なれない

先日、社長と同行営業をした。

トップセールスというより、就任したばかりなのでただの挨拶回りである。

社長と一緒に外回りをするなんて、良いことはほとんどない。

せいぜい、食事を奢ってもらえることくらいだろうか。

基本的には気を遣うことが多いので、ただのストレスである。

運転中にCDを流してカラオケを楽しむこともできない。

余談だが、最近のレンタカーは皆ドライブレコーダーが付いているので、運転中のカラオケは場合によってはとても恥ずかしいことになるのではないかと危惧している。

 

さておき、社長との同行とあれば宿泊するホテルも自分の好きなようには選べない。

まさか「社長はあちらのホテルで、私はこちらのホテルで泊まります」というわけにもいかないだろう。

一緒に行動する上では、面倒なことが増えるだけである。

うちの会社では出張手当が出ない代わりに、宿泊費は固定支給になっている。

つまり安いホテルに泊まれば、差額をもらえることになる。

私が普段泊まるホテルというのは、大体4,000〜5,000円くらいのところである。

地域によるが、ビジネスホテルとしては中くらいか、中の下くらいのランクだろう。

しかし社長と泊まるのに、そんなホテルもいかがなものだろうか。

小さい会社だとはいえ、仮にも大手企業のグループ企業のトップである。

いくら常識破りな私とはいえ、一応気にするくらいの良識はある。

それに、社長にはそのあとに結婚式の主賓の挨拶をお願いしてあった。

めんどくさいので、不興を買うことはできれば避けたい。

 

結局、自分で好きなホテルを選んでもらって、私が同じところを予約することにしようと思った。

社長だって、会社の経費として負担できる金額くらいは知っている。

さすがにそれをオーバーするようなところは選ばないだろう。

「選んでおいてください」と言おうと思って社長室に行くと、「どこがいいと思う」と言って、その場でスマホを私に見せながらホテルを探し始めた。

めんどくさいことになったなぁと内心思いながら、「あぁ、いいですね。そっちもいいですね」などと適当な相槌を打ちながら、右の耳から左の耳に流していた。

「綺麗なホテルがいいよね。こことかどう?」

「そこは場所が少し遠いですね」

「こっちはどうかな?」

「あぁ、そこは綺麗ですね。いいんじゃないですか」

「でもここ、部屋の広さが13平米しかないね。せめて16平米はほしいなぁ」

「はぁ、そうですか…」

と、まぁそんな感じである。

 

っていうか、ビジネスホテルで平米数を気にする人とか初めて見た。

むしろ、予約サイトに部屋の平米数が掲載されていることも初めて知った。

1泊するだけである。

狭かろうが広かろうが、どうせ寝るだけだろう。

ホテルの床で筋力トレーニングやヨガに励むつもりなら話は別だが。

私なんぞは、以前は節約のために毎週のようにカプセルホテル泊を繰り返していた。

30歳を過ぎてさすがに辛いなと思い始めてやめたが、土建屋のおじさんたちは50歳だろうが60歳だろうが、カプセルホテルで満足そうに過ごしている。

カプセルホテルは行き過ぎの感もあるが、私はむしろ狭い部屋の方が落ち着いたりもする。

 

結局、1泊7,000円のビジネスホテルに泊まることになった。

小倉だったのだが、小倉で7,000円ならビジネスホテルとしてはハイクラスである。

小倉なら5,000円出せばそこそこのホテルに泊まれるし、私はいつもは4,000円前後のホテルに宿泊している。

当日は夕食に、食べログ1位に輝いたこともあるという駅近くの豚骨ラーメンを食べに行き(社長が自分で調べて「行きたい」と言った)、瓶ビールと替え玉を奢ってもらった。

ちなみに昼は、新宿さぼてんのとんかつ定食にデザートまで付けたフルコースをご馳走になっていたので、ここはさすがにラーメン代くらいは自分で出した。

肝心のホテルに入ってみると、たぶん私が今まで泊まったホテルで五指に入るくらいの綺麗さだった。

綺麗だし、広いし、アメニティは充実しているし。

しかし残念ながら寝る以外にすることがない。

やることといえば、せいぜいブログ記事を書くくらいであるが、私の場合、PCを打つのにスペースは問題にならない。


きっと、ホテルの部屋の平米数を気にし、これくらいの部屋の広さを満喫できなければ、エグゼクティブな身分にはなれないだろう。

貧乏性の私には一生縁のなさそうな話である。

スーパーで割引シールの貼られた食材を率先して買い、ちまちまポイントカードを貯めてニヤニヤしているようではダメなのである。

しかし、割引の食材を買うことや、ポイントを貯めることには、実際の経済的効果以外の達成感や充実感がある。

そう考えると、意外と小市民的な生活には、目に見える以上の価値が含まれているかもしれない。

であるなら、私はあえてエグゼクティブになれなくてもいいと胸を張りたい。

これはエグゼクティブになれないことに対する強がりではない。

たぶん、3%くらいは本気で思っている。