異呆人

毒にも薬にもならない呟き

バカになること

先日、新入社員の歓迎会があった。

営業部門の最高責任者である社長も出席するオフィシャルなものである。

まあ非常にフラットな会社なので、だから気張るとかそんなことはない。

私が役職名で呼ぶのも社長や常務などの役員クラスぐらいで、部長などはみな「さん」付けである。

今の副社長などはうちに長くいて部長から繰り上がった人なので今でも「さん」付けで呼んでしまうし、本人の前以外では社長も「さん」付けにしてしまうことがある。

私が「◯◯部長」と呼ぶときは半分くらい茶化しているので、「こういうときばかり部長扱いしやがって(笑)」となる。

うちの会社がフラットだということもあるが、私が肩書きを気にしないということもあるかもしれない。

 

さておき、あまり難しいことは気にせずに楽しく飲み食いしていた。

女性陣はめんどくさいオヤジどもの相手を嫌がって離れて固まっていたのだが、「朱天さんは女子力高いからこっち」という意味のわからない理屈で私は女性陣の輪に加わることになった。

両手に余る花に喜ぶところだろうが、オヤジども以上にどぎつい下ネタトークの相手をすることになった。

これはこれでめんどくさい。

あまり飲ませ過ぎるとまた介抱するハメになるので、様子を見ながら飲んだ。

幸い、ほどほどの量で切り上げることになり惨事はなく、胸を撫で下ろした。

 

早い時間で終わったので、一部のメンバーで二次会でカラオケに行くことになった。

私は家が遠いし、翌日は出張で6時には家を出なければならなかったが、時間が許す限り付き合った。

サザンのエロティカセブンとか、玉置浩二の田園とかを歌った。

相手を見た選曲である。

最近は歌いたい曲を歌うことなど、一人でカラオケに行くときしかない。

最大限に空気を読むのが、近頃のマイブームである。

オヤジどもも女性陣も好きなだけ羽目を外し、大いに盛り上がった宴となった。

 

昔は飲み会が好きではなかった。

学生の頃は出来る限り参加しないようにしていたし、参加しても隅の方で静かに飲むようにしていた。

酒は美味いと思うが、どれだけ飲んでも気持ち悪くなるばかりで気分が酔えない私には、酔ってどんちゃん騒ぎをする奴らがバカに見えた。

何が楽しいのかわからない。

こちとらそもそも生きてても大して楽しくないのだ。

冷めた頭で醜態を見せられると、余計に楽しくなくなる。

そんな風に思っていた。

 

それがいつから変わったのかはわからない。

たぶん仕事を始めてからだと思う。

営業の仕事をしていると、否応なしに取引先と酒を飲む機会がある。

楽しかろうはずがない。

それでも出来るだけ盛り上げ、楽しそうに飲むしかない。

もっと言えば、マインドを変えて楽しく感じられるようになれば言うことない。

だから、そういった場を楽しめるように、自分の中で状況の受け入れ方を変えてきたのだと思う。

昔を知る友人知人からは「丸くなった」と言われた。

不本意とまでは言わないが、本意ではない。

だがそれも生きていくためのスキルの一つだと、自分に言い聞かせている。

 

今は周りからすれば、飲み会を楽しんでいるように見えるはずである。

いや、実際に楽しめるようになっている。

そんなものは意識一つでどうにでもなるものなのだ。

ただし、少し離れたところから見下ろすように自分を眺める視点だけは、変わらずに存在している。

バカになる、バカなふりをする、ほんの少しだけ大袈裟にする、少しだけ演技をする。

舞台の上で一人芝居をする役者を、袖から眺めるような感じ。

 

きっと昔の自分が今の自分を知れば、バカにするだろうなと思う。

それも間違っていないと思う。

自分の信念だけを大切にし、真っ直ぐ信じる道だけを歩くなら、そう思えて当然である。

しかしなにも、岩を刀で両断するような真似に拘らなくてもいいと思う。

ときに踊って、道化て、手拍子で観客を煽ってやればいい。

大丈夫、君はそれだけやっても、もう何も変わらない。

そう言ってやりたい。

バカになっても何も得られないが、何も失わない。

本当に完成した何かなら、何に影響されることも恐れる必要はない。

 

あぁでも、最後にTRAIN-TRAINを熱唱したのは余計だった。

まだ喉の調子が悪い。

酒とカラオケほど相性の悪いものはないと思う。

羽目を外すふりも、ほどほどにした方が良さそうである。