異呆人

毒にも薬にもならない呟き

ストーリーとしての競争戦略

久しぶりに本を読んだ。

それもハードカバーのビジネス書である。

「ストーリーとしての競争戦略」:楠木 健

 

日経新聞は毎日読んでいるし、日経ビジネスなどのビジネス雑誌を読んでいたこともある。

しかし普段はあまりビジネス書は読まない。

新聞や雑誌を読むのは情報収集が目的であり、学習が目的ではない。

この手の本を読むのは、一時期流行ったドラッカーの「マネジメント」(「もしドラ」ではない完全版の方)を読んで以来である。

きっかけは日経新聞のビジネス書解説のコーナーだった。

よく読まれている、あるいは流行りのビジネス書の内容を、かいつまんで解説してくれるコーナーである。

物語のあらすじだけ読むような行為ではあるので良し悪しだが、ビジネス書丸々一冊読む気力のない私などには、なかなかありがたいものだったりする。

確かそのコーナーにこの本の名前が挙がっていて、「すでに経営学のクラシック(古典、あるいは基本)と言える」と評価されていた。

これはいわば「ベタ褒め」である。

私も名前は聞いたことがあったし、興味は持っていた。

折しも自社の戦略についてあれこれ考えていたところだったので、「そこまで評価される代物なら」と読んでみることにした。

たまには堅い本を読むのも頭の体操になる。

 

しかし、私の読む前の気構え、つまり「ビジネス書を読むぞ」という気概は、良い意味で裏切られた。

なぜなら、面白くて一気に読んでしまったからである。

これは本の内容とも関連するのだが、著者が「読んで面白いもの」を目指して書いているからである。

だからビジネス書にしては読みやすいし、面白いのだが、内容はとても深い。

新しい読書体験をしたような気分になる。

「思わず一気読みのエンターテイメント小説」というのはあるし、「読み応えのある重厚な良書」というのもあるが、それらとは少し異なる。

いわば、「老舗の料亭の味をランチでこの価格で」というような代物である。

内容は重厚だが、肩肘張らずにカジュアルに読める。

 

最初の方は、「そうそう、こういうことが言いたかったんだよ」というように、自分が考えていた「戦略」なるものに合致する部分が多く、頷きながら読んでいた。

ゴールの設定、つまり利益の源泉をどこに求めるか、コンセプトの重要性、戦略の一貫性の重要性、個々の打ち手(私が考えるところの「戦術」)のシナジーなど、非常に参考になる部分が多かった。

ぜひうちの会社の人間に読んでもらいたい。

というか、この本の話をしたときに部長が借してほしいと言ったので、すでに読み終えて貸してしまっている。

こういう考えを共有できる人が増えれば、それを実際に行動に移すことができるかもしれない。

自社に置き換えて、改めて戦略を考えるのである。

ちなみに戦略と戦術については、随分前に記事にしている。

syuten0416.hatenablog.com

 

初めは「私もそう思う!」というスタンスで読んでいたのだが、後半は内容がそこからさらに深化する。

「そうそう」から「ほうほう…」に変わり、「頷く」から「膝を打つ」に変わった。

自分が考えもしなかった理論が次々と展開され、まさに目から鱗が落ちるような思いで読み進めた。

特に著者が言うところの「起承転結」における「転」の発想、戦略の「キラーパス」の理論は非常に面白かった。

誰もが「こうすれば良いよね」と思う戦術は真似されやすく、他社との違いを生みにくい。

違いを生み出せなければ消耗戦になり、利益が上げられなくなる。

しかし一見すると「そんなやり方はダメだ」、「業界をわかってない」と思えるようなやり方だが、戦略全体で見たときに非常に効果的な一手に変わるような戦術であれば、その一手だけ真似しても効果を発揮しないし、そもそも「真似しよう」という動機を生まない。

それこそが戦略における最も重要な「キラーパス」だというのである。

 

これは上記のように端的にまとめようとしてもわかりづらい。

この本の中ではスターバックスAmazonアスクルなどの事例を取り上げて、非常にわかりやすく解説してくれている。

興味があれば、ぜひ読んでもらいたい。

また、わかりやすいだけでなく、面白いのである。

著者は「良い戦略」の一つの指標として、「話している本人が面白がって話せる」ことを挙げている。

だから「良い戦略」の具体例として出てくる上記企業の戦略というのは、読んでいる側もとても面白いのである。

自分もしかめっ面して腕組みしながら戦略を考えるのでなく、人に楽しそうに語れる戦略を考えたいものだと思う。

まぁ、それは自分が戦略を考え実行できる立場になればの話ではあるが。