異呆人

毒にも薬にもならない呟き

愛を知らぬゆえに、愛に憧れる

今週のお題「カラオケの十八番」

 

カラオケが好きである。

厳密には歌を歌うことが好きなのだが、家で鼻歌を歌うときを除けば、カラオケで歌う以外に歌を歌うチャンスなどない。

家で鼻歌を歌うときだって、声量を絞らないと近所迷惑になるので自重している。

小さい頃は、機会があれば率先して歌っていた。

小学生のときに運動会の応援団をやったとき、本番でアドリブでマイクスタンドを差し出されたら、躊躇わずに思い切り応援歌を歌ったことがある。

予定になかったことなので、見に来ていた両親はいきなり息子の歌声が響いて驚いたそうだ。

 

中学生や高校生の頃は、部屋でイヤホンで音楽を聴きながら、声を落として歌っていた。

部活をしていたのでバイトができず、金がなかったのでカラオケなど滅多に行かなかった。

大学生になってからは、気が向いたら友人と連れ立って行くようになった。

仲の良いメンバーと行くので、音楽の趣味なども似通っており、気を遣わずにカラオケを楽しめた一番良い時期だったかもしれない。

仕事をするようになってからは、一人でカラオケに行くようになった。

新卒で赴任した土地には縁もゆかりもなく、できる遊びは限られていた。

仕事のストレスも大きかったので、遠慮なく大声を出せるカラオケはとても楽しく、いいストレス発散になった。

まだ「ヒトカラ」という言葉が使われ始めたかどうか、という頃だったと思う。

月2,3回一人で来店して、フリータイムで3時間ほど歌って帰る客は、店員から奇異に思われていたかもしれない。

 

万能型の私は、歌も人並み以上に得意である。

人が聞けば「おっ」と思う程度、少なくとも聞き苦しくはない程度ではある。

ただ人前で歌うのが好きかと言われると、嫌ではないが好きではない。

私みたいな素人が歌うことは、基本的に自己満足である。

つまり歌うときは悦に入っているわけで、そんなところを人様に見られて恥ずかしくないほど、私は羞恥心の欠けた人間ではない。

だから人前で歌うときは適当に手を抜く。

別にわざと下手に歌うわけではない。

野球で言うなら、オープン戦に登板するピッチャーのようなものである。

本気で熱唱したいときは、やはり一人でカラオケに行くのである。

 

好きな歌はいろいろあるが、カラオケで歌うのは基本的にノリの良い明るい曲が多い。

これは一人でカラオケに行くときもそうである。

しっとりバラードを歌いたいときもあるが、ストレス発散を兼ねて楽しんで歌うのだから、やはり歌って元気になれるような曲の方が好きである。

ただ冷静に選曲を眺めていたりすると、ラブソングが意外と多く、そしてその中でも失恋ソングが多かったりする。

たぶん私のことを知っている人なら、私とラブソングの取り合わせのミスマッチは、ショートケーキ味の一平ちゃんと同レベルだと感じられるだろう。

それくらい、私は恋愛に縁の少ない人生を生きてきた。

それはモテるモテないとか、恋愛したいしたくないとか、そういう話ではなく、単に私に恋愛感情がないからである。

 

それなのにラブソングが好き、というかよく歌うのは、むしろ恋愛感情がないからだと言える。

私は恋愛感情のある人ってすごいな、と思っている。

私の親友などはそれこそ何度も失恋し、その度に事の顛末を語って聞かされるのだが、それだけ人の良いところに目を向けて好意を抱き、恋が実らなければ嘆き悲しむ豊かな感情があることは、とても素敵なことだと思う。

恋愛至上主義みたいなものには辟易するし、恋愛以外にも人生には素晴らしいものがたくさんあるのだが、恋愛もまた素晴らしいものだろうなと思うのである。

ラブソングを歌うと、そんな恋愛感情を擬似体験した気になれる。

詞という詩にありったけの気持ちが詰め込まれたものを感情を込めて歌うと、気分だけでも味わった気になれるのである。


いろいろ歌う曲はあるのだが、一人でカラオケに行くと必ず歌い、十八番と言える程度に得意な曲は一つだけである。

RADWIMPS:「もしも」。

片想いの相手への愛をこれでもかと歌う曲で、実際にこんな奴いたら「重い」んじゃないかと思うくらいだが、意外と世間の人の恋愛感情というのはそれくらい切実なのかもしれないと思ってしまう。

特に終盤に入る以下のメロディの部分が好き。


「周りのみんなは君を顔で選んだって言うけれど

    そんなんじゃなくて そんなんじゃなくて 君の人間好きになった」


すごくシンプルだが、こんな風に思える人がいるって、素敵なことだと思う。

自分もそう思える人を見つけたい、自分も誰かにそう思われたい、そんな気持ちがメロディとともに湧き上がる箇所である。

この後の間奏部のストリングスも非常に良い。


RADWIMPSと言えば、昨年は「君の名は。」の主題歌「前前々世」で一躍時の人となり、紅白にも出場した。

好きだと言う人は回りにも結構いて、「有心論」あたりが一番好きだという意見をよく聞く。

しかし「RADWIMPSが好き」と言う人の中にも、この曲を知らない人が結構いて、ちょっと残念に思ったりする。

良い曲だと思うんだけどね。

ちなみにこの「もしも」はインディーズの頃の1stシングルらしく、CDは限定生産だったので今ではとんでもない値段が付いているようである。

その後の1stアルバムに収録された同曲は「みんな一緒にバージョン」となっており、私はこちらしか聴いたことがない。


この曲はすごく気分が乗ったときは友人の前でも歌う。

ただし好きな曲なので、歌うときには手を抜かない。

つまり他の曲より上手く聞こえるので、唯一他人から私の十八番として認識されている曲でもある。

しかし昔の部活の後輩からは、「めっちゃ上手いんですけど、上手さと朱天さんが歌う似合わなさのギャップがすごいです」と言われたことがある。

いや、自分でもわかってるよ、もちろん。

この言葉を思い出しては、やっぱりカラオケは一人で行くものだなと思い直したりするのである。