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異呆人

毒にも薬にもならない呟き

懐に入る方法

仕事

私は、人間関係は適度な距離を保っている方が好きだ。

それは以前にも書いた。

人間関係の間合いと言葉の選び方 - 異呆人

しかし、そうは言っていられない場合もある。

仕事上の人間関係である。

それも社内の人間との関係ではなく、取引先など社外の人間との関係である。

特にBtoBの営業を主として行ってきた身としては、社外の人間との関係の重要性は嫌という程感じる。

それはズブズブになるまで深く付き合え、ということではない。

むしろ近過ぎる関係は悪影響の方が多い。

仲良くなり過ぎて「この人じゃないとダメ」というように仕事が属人化してしまうと、企業対企業として健全に付き合えなくなる。

異動などはどこの企業でもあることなので、それによって取引先を失うリスクだって生まれる。

誰が担当しても心地良く取引を続けられる関係を作り上げるのがベストなのである。

 

そういうリスクはもちろんあるのだが、それでも社外の人と仲良くなることは重要だと思う。

それは結局、人と人が接するビジネスである以上、避けようのないことなのだ。

どれだけビジネスライクに割り切ったって、人間だから相性の良し悪しや好き嫌いはある。

極端な話だが、嫌いな人から物を買おうと思うだろうか。

動く金額の大きい大口取引ならともかく、ミクロなビジネスの現場では、人の好き嫌いがものを言うことは多い。

せめて好かれなくても、嫌われることは絶対に避けなくてはならない。

私自身が「A社の担当が好きになれないので、おたくに乗り換えます」と言われる機会がよくあり、その度に自分も気をつけないとなと、気持ちを引き締めさせられるのだ。


仲良くなるというのは漠然とした表現であるが、要は相手との心理的な距離、間合いを詰めればいい。

イメージとしては、音も無く、気取られずに相手の懐に入る感じである。

方法はいくつもある。

まずは形が大切である。

私はカジュアルな敬語を使うことを推奨している。

尊敬語や謙譲語を使ったガチガチの敬語ではなく、「ですます」などの丁寧語を中心とした敬語である。

初めは型通りの敬語で話し始めるが、相手と会話が進み、雰囲気が温まってきた段階でカジュアルな敬語を混ぜていく。

言葉がカジュアルになるのは間合いが近くなった証拠なのだが、わざとこちらから言葉を崩して間合いを詰めることで、自分と相手の心理的な距離が縮まったような錯覚を起こさせるのである。

もちろん通用しないガードの固い相手もいるので、人を見て使う必要のある技術ではある。


次に、会話する際に、相手にたくさん話してもらう。

バランスは、自分と相手の話す量が、自分:相手が3:7か4:6くらいがちょうど良い。

話をするのが得意な人と苦手な人はいるが、話をするのが嫌いな人はほとんどいない。

大抵の人は、皆、自分のことを話したがる。

私は、うまく話が出来なくてトラウマになるから、話をするのが嫌いな人が生まれると思っている。

自分のことを知ってほしい、理解してほしいという承認欲求は、あって当然なのである。

自分が3割か4割くらい話した方がいいのは、自分ばかり話していることを気にする人がいるからである。

多くの人は無意識のうちにバランスを取ろうとする。

「たくさん話せて楽しい」と「自然に会話のバランスが取れていて心地良い」という感覚が両立するくらいがベストである。


難しいのは、どうやって相手にたくさん話をしてもらうか、である。

世の中の1〜2割は、まくし立てるように話す人がいて、こういう人は放っておいても話したいだけ話す。

そしてこのタイプの人は、自分が話し過ぎていても気にしない。

軽く相槌だけ打っていればよく、非常に扱いやすくて楽である。

それ以外の普通の人は、話してもらうために質問する必要がある。

この質問が難しいのである。

まず、いきなりプライベートな質問をしてはいけない。

仲良くなろうとプライベートな範囲にいきなり直球を投げる人がたまにいるが、そういう人は概ね相手の気持ちを考えない人である。

共通の話題から場を温めるのが順当な方法だ。

ビジネスならビジネスの話、これが合コンだったりするなら、出身地や仕事の話など、話しやすい話題を切り出すのが王道である。


もっと言えば、いきなり質問するのも避けたい。

相手に話をさせようとすると、焦って質問から入ってしまいがちである。

いきなり質問が飛んでくると、どれだけ丸い質問でも、相手は多少なりと身構える。

たくさん話してもらうつもりなら、構えさせてはいけない。

そのために、まずは自分から話をするのである。

軽い自己開示。

相手に名を尋ねるなら、自分がまず名乗るのと同じ道理だ。

そうすることで、相手は「自分も話をしていいんだ」、「自分も何か話さないといけない」という気持ちになる。

また自分から話を進めることで、会話の主導権を握ることもできる。


できるなら、最初に相手に質問してもらうくらいがいい。

例えば「このあたりは初めて来たんですが、思ったより時間がかかりました」と言えば、「そうなんですね。今日はどちらからですか?どのくらいかかったんですか?」など、相手が自然と質問してくる。

こういう突っ込みどころ、いわゆる会話の「フック」をわざと作ることで、話が広がる余地が生まれるのである。

相手に質問させて答える。

そうすると、相手はバランスを取るためにこちらの質問に答えやすくなる。

そうやって会話のラリーを続ける中で、相手が話す比重を増やしていく。

ときにはこちらから、プライベート寄りの自己開示を入れてみたりする。

相手がどの範囲のボールまで返してくれるか見極めながら、相手の自己開示も誘っていく。

このくらいまで進めば、もう十分に相手は会話を楽しんでいるだろうし、「この人と仲が良い」、「仲良くなれそう」と錯覚する。


そういう基礎となる技術が身に付けば、あとは話題の引き出しを増やしたり、相手に合わせてテンションやテンポを変えたりするくらいである。

卓球やテニスのラリーと同じだ。

相手の球の回転など、球質を見極めてこちらの返球を変えていく。

その引き出しの種類や幅が、そのまま付き合う相手の種類や幅に繋がるのである。

ずっと人と接する仕事をしていると、そんなことが身に付いてしまう。

冷静に書き出すと、なかなか嫌味なやり方である。


まぁ、ほんとのほんとに嫌いな相手であれば、仕事とはいえ距離を置いたり、取引をやめたりするが。

そういう嫌な奴というのは、仕事の上でも付き合うメリット以上にデメリットが大きかったりするものだし。

これが取引先ではなく上司であれば、ドンパチやることも辞さない。

というか、実際過去に何度も上司に食ってかかっている問題児である。

相手が誰であれ、筋は通さなければならない。

それが自分の生き様でもある。