異呆人

毒にも薬にもならない呟き

セルフメディケーション税制とスイッチOTC薬

昨年の税制改正で施行が決まった税制に、セルフメディケーション税制がある。

身近なものが対象になるのでメディアでも度々取り上げられていたし、一頃は「スイッチOTC」という単語が一人歩きしている感すらあった。

私もFPの有資格者なので興味を持って見ていた。

さらに私は今年から一人世帯から二人世帯に変わったので、使える税控除の幅が一気に広がる。

もしかしたら役に立つこともあるかもしれない。

自分への備忘録を兼ねて記事にしておく。

ちなみにこの税制は、平成29年1月1日から適用されている。

 

セルフメディケーション税制とは?

セルフ(自分自身)でメディケーション(投薬)することに対して、経済的負担を軽減しましょう、という制度である。

昨今は医療費の膨張が指摘されている。

なんでもかんでも医者に診てもらうのではなく、自分で服薬して治せるものは自分で治しましょう、そしたら少し税金減らしまっせ、というわけである。

実際の「セルフメディケーション」という単語はもう少し別の意味で使われるようだが、日本人の英語感覚からすると、このくらいでちょうど良いというのは理解できる。

しかし自己投薬といっても、市販薬をすべて対象にしたのでは広過ぎる。

疲れ眼用の目薬や、ビタミン剤の中にも医薬品のものはある。

そこでこの制度で対象とされるのが、「スイッチOTC薬」である。

 

◯スイッチOTC薬とは?

OTCとは「over the counter」の略だそうで、直訳すると「カウンター越しの薬」、つまり店頭で買える薬ということである。

スイッチOTC薬というのは、元々は医師の処方がなければ買えなかったが、安全性やなんやが認められて店頭で買えるようになった薬のことである。

代表的なものでは、痛み止めのロキソニンがある。

どれがスイッチOTC薬なのかは、一般の人にはなかなかわからないだろう。

ということで、スイッチOTC薬の外箱には専用のマークが付くことになっている。

http://www.yakuji.co.jp/wpyj-002/wp-content/uploads/2016/06/y11736_10-01.jpg

↑こんな感じ。

上がスイッチOTC薬のマークで、下が表示イメージ。

このマークの付いた薬を購入した費用が、SM税制(略すと、ちょっとアレ)の対象となる。

 

◯制度の概要

自分、もしくは自分と生計を同じくする親族が購入するスイッチOTC薬の金額が12,000円を超えたら、超えた金額が所得控除となる。

控除対象額の上限は88,000円、購入総額10万円までである。

まぁ、スイッチOTC薬だけで10万円以上になることはないだろうが。

10万円を超えれば既存の医療費控除の対象になるので(控除対象額は全然違うが)、上限はそのあたりの兼ね合いでの設定だろう。

医療費控除との関係は後述する。

例えば、年間のスイッチOTC薬購入額が3万円、所得税率が10%の人なら、1,800円の所得税の還付が受けられる。

*(30,000-12,000)×10%=1,800

3万円分もスイッチOTC薬を買って控除される額が1,800円程度なら、効果としては微妙かもしれない。

SM税制を適用する場合は、確定申告が必要になる。

その手間を考えたときに、その人にとって見合う金額になるかどうかだろう。

自営業など、もともと確定申告をしている人にとっては、それで数回の食事代が浮くと思えばなんでもないことかもしれない。

ポイントが1つあるとすれば、「自分と生計を同じくする親族」の分を合算できることである。

家族全員の分をかき集めれば、12,000円という控除適用となるラインは超えられるかもしれない。

 

◯医療費控除との関係

医療費については、すでに「医療費控除」が存在する。

これはざっくり言うと「1年間でかかった医療費が10万円を超えた分は所得控除できる」という仕組みである。

対象は自分及び自分と同一生計の親族に支払った金額である。

年間医療費10万円以上というと結構な額である。

しかも生命保険等での給付金額は、かかった医療費から差し引かなければならない。

さらに所得控除なので、還付額は小さくなると思われる。

大きな病気をしたり、出産があるなどしないと、なかなか利用することのない制度ではないだろうか。

この医療費控除からすれば、SM税制による控除は少し使いやすいかもしれない。

ちなみに医療費控除とSM税制は、どちらかしか選択できない。

スイッチOTC薬の購入額は、どちらの費用としても計算できる。

多くの人にとっては、他の医療費とスイッチOTC薬の費用を足しても10万円にはならないだろうから、SM税制を利用した方が得、というかこちらの制度しか使えないと思う。

計算してみると、スイッチOTC薬の費用を除く他の医療費が88,000円を超えれば、医療費控除を利用した方が控除額が大きくなる。

そう考えるとSM税制というのは、現行の医療費控除ではまったくお世話になることがなかった人でも利用できるかもしれませんよ、という制度だと言える。

うん、微妙。

 

◯使えるのか?

結構持て囃す人もいるが、実際に使うことになる人は限られているような気がする。

少なくとも、「すごく良いよ!」と他人に利用を勧められるほどの効果が出るかどうかは微妙。

確定申告をしたことがない人にとっては、その手間の方が圧倒的に大きく感じられるかもしれない。

製薬会社がプッシュして出来上がったのではないかと勘繰りたくなる。

これで医療費の膨張に歯止めはかけられんだろうなぁ。

スイッチOTC薬に含まれる薬が、どのようなものでどれくらいあるのかきちんと確認してはいないので、それ次第と言えないこともないが。

まぁ、こんな制度のお世話にならないくらい健康であることが一番なのは間違いない。