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異呆人

毒にも薬にもならない呟き

IKEAすげぇ 〜後編〜

IKEAすげぇ 〜前編〜 - 異呆人

IKEAショールームを見ていて面白いなと思ったのは、それらがプリセットの提示であることである。

商品自体は基本的に同じもの、あるいは大きさが違うだけのものがほとんどである。

アイテム数は同業他社と比較して、かなり少ないだろう。

それが組み合わせや部屋の雰囲気を変えて、繰り返し提示されるのである。

商品はシンプルで、特別デザインに優れていたり、機能的だったりするわけではない。

ただそれが「こういう風に使えますよ」と、プリセットの形で提示されることで、見る側の想像力を喚起し、価値を付加されるのである。

IKEAが持て囃されているのは、ひとえにこのシステム、マーケティングの力によると言えるだろう。

それにセルフサービスによるコストダウンを加えることで、コストパフォーマンスにレバレッジをかけて見せている。

実際に商品単体で見れば、値段が特別に安いわけでも、質が良いわけでもない。

ある意味、マジックである。

ビジネスとしての戦略性の高さに好感を持った。

 

あと、「持って帰って組み立てなければならない」という事実を全面に出しているあたりが、面白いなと思った。

「それでもいい人はどうぞ」という姿勢である。

ご丁寧に、電動ドライバまで売っている。

それから、店内が異様に広い。

おまけに順路通りにしか見て回れない。

いろんな工夫に感心しながら、心の中の「へぇ」ボタンを押して見て回っていたのだが、あまりに広くて見るべきものも多く、2時間という制限時間があっという間に過ぎそうなペース配分になっていた。

とりあえず、必ず買う必要のあるベッドとダイニングテーブルセット、食器棚代わりになるものはチェックしたので、急いで出口へと向かった。

なのに、なかなか出口に辿り着かない。

これでは必要なものだけ買って、さっと帰りたい人は困るだろうなと思ったが、そもそもそんな客はIKEAに来ないということに思い至った。

 

それが戦略である。

100人客がいたら、100人に「いいね」と思ってもらうことは難しい。

80人の「いいね」がもらえるような努力をすれば、八方美人になってしまう。

そうではなく、20人、30人の客に「いいね」と思ってもらえて、その客が離れないでいてくれたらいいわけである。

だから、家具を持って帰るのがめんどくさかったり、組み立てるのがめんどくさかったり、長々と見て回らされる店の仕組みにうんざりするような人は、IKEAに来なくていいのである。

家具を持って帰ったり組み立てたりするのを「安いから仕方ない」、「むしろ楽しい」と思えるような人、テーマパーク気分で家具を見て回るのを楽しめる人が来るところなのである。

よくできている。

 

ようやく商品を運び出す倉庫に着いたときには、すでにカーシェアの使用時間延長が必須の状況だった。

慌てて、チェックした商品の棚番号、列番号をもとに商品を探し始めた。

最初のうちは順調に探し出せていたのだが、途中でどの棚に商品があるかメモしていないものが見つかった。

「全部セルフで解決しないといけない」という強迫観念のようなものがあった私たちは、当てずっぽうで探していた。

しかし倉庫は広く、おまけに似たような商品がたくさんあるため、目的のものがなかなか見つからなかった。

諦めて、近くにいた店員さんに恐る恐る「このベッドはどこにありますか?」と聞いてみたら、「お調べしますね」と言ってPCのあるスペースに案内された。

商品をピックアップする作業は有料らしいが、棚番号とかを調べるだけなら無料でやってくれるらしい。

初めから頼めばよかった。

意外と親切である。

 

その後、なんとか会計までは済ませられた。

重たいベッドやテーブルやマットレスを台車に積み、レジまで運んで会計するのも大変だったが、ここからさらに大変な作業となる。

そもそも、「これだけの大荷物、コンパクトカーに載らないよね」という状態である。

一応、カーシェアは荷室の広いフィットにしていたのだが、テトリスのピースを落とし込むようにして何とか積み切れるくらいだった。

ベッドの長尺のパーツなどは、シフトレバーの上あたりまで伸びてきている始末である。

「荷物の積み過ぎで警察に怒られない?」と、妻になる予定の人は散々心配していたが、「後方確認できれば大丈夫」と押し切って運んだ。

 

帰り道の渋滞の中、カーシェアの使用時間を延長し、予定していたガスの開栓作業も待ってもらい、「IKEAに行くときは1日潰すつもりで行くべし」ということを、教訓としてひしひしと感じていた。

しかし、反省すべきところはそれだけではなかった。

車をアパートの駐車場に止めたが、まずそこで荷物を下さなければならない。

そしてカーシェアは15分単位で課金されるので、荷物を下ろしたら先に車を返却する。

それからアパートに戻り、今度は駐車場から荷物を2階の部屋まで運ばなければならなかった。

フィットの後部座席いっぱいの荷物である。

おまけにベッドやらテーブルやら重たいものばかりである。

翌日、腕が上がらなくなり、箸が握れなくなるほど握力が落ちたのは言うまでもない。

まず、IKEAにレンタカーで行ってはいけない。

それから荷物が多いときは、素直に金を払って配送してもらうべきである。

というか、車を所有しているなら、まとめ買いせずに何度かに分けて少しずつ買いに行く、ついでに買い物そのものを楽しむのが、IKEAでの上手な買い物の仕方なのだろう。

 

ちなみに組み立ては、ほとんどドライバー1本あればできる簡単なものだった。

ただし、簡単であることと、時間がかからないことは違う。

一番小さかった椅子1脚に30分、ベッドは1人で組み立てたら3時間近くかかった。

ちょっとずつ買って、ちょっとずつ組み立て、部屋を少しずつカスタマイズしていくことを楽しまなければならないのだろう。

IKEAを楽しむのも、なかなか大変である。

 

IKEAすげぇ。IKEAすげぇけど、すげぇ大変!」

以上が、IKEAでの買い物の感想である。