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異呆人

毒にも薬にもならない呟き

みんなで串から外さずに焼き鳥を食べるには

随想

最近、焼き鳥を串から外して食べることの賛否が話題になっていることを、昨日初めて知った。

家にTVはないし、ネットニュースも漁らない私にとって、世間の話題というのは概ね周回遅れでやってくる。

きっかけはどこぞの焼き鳥屋が「お願い」として、「焼き鳥は串から食べて欲しい」という主張をしたことによる。

焼き鳥は串に刺さった状態のものを焼くだけの店もあれば、店で串打ちをして焼く店もある。

わざわざ串打ちをしている店にとっては、せっかく串を通したものを食べるときに外されることに遣る瀬無さを感じるのかもしれない。

わからないこともないが、わざわざ文章にして主張するほどのことでもない。

頑固オヤジの営む店で、「そんな風情のわからない客は帰れ!」と追い払うのでなければ、やはり飲食業というのはサービス業でありカスタマーファーストであるべきだと思うので、好きに食べさせてやるべきだと思う。

 

そもそも、なぜ鳥を串に刺して焼くのだろうか。

「それが焼き鳥なんだ!」と言われればそれまでだが、串に通すことになったのにも理由があるはずである。

理由の一つは、持ち運びのしやすさにあるのではないかと思う。

焼き鳥って、そもそも屋台で買って屋外で食べるものなのではないだろうか。

屋外で食べるものというのは、持ち運びのしやすさと食べやすさを重視して、串に通して売られるものが多い。

ただ焼いた鳥を食べるということに主眼を置けば、鉄板や網で焼いて、皿に乗せて箸でつついても構わないはずである。

そう考えるなら、店内で食べる焼き鳥が串に刺されている意味は特にない。

なんなら焼いた後に串から外して提供する方が、客のためになるのではないかと思えるくらいである。

焼き鳥を串から食べると、串の持ち手についた炭とかタレとかで手が汚れる。

箸で食べるものと混在すると、都度手を拭かなければならずめんどくさい。

 

もう一つ思いつく理由としては、調理のしやすさがある。

鉄板でじゃんじゃん焼くのであれば別だが、炭火で焼くことにこだわるなら、網の上で焼くというのはなかなか手間である。

肉が網にくっつけばひっくり返すのが大変だし、一つ一つひっくり返すのも手間である。

串に通した焼き鳥なら、串ごとひっくり返せば仕舞いである。

焼き加減に目を配る必要はあるだろうが、実に粗放的で調理が楽である。

しかし調理のしやすさに主眼を置くなら、食べるときは串から外そうが串から食いつこうが、どうでもいい話と言える。

そんなことまで店からいちいち指示する必要はない。

 

食べる方の客は、なぜ串に刺さっている焼き鳥を串から外して食べるのだろうか。

串に刺さっている鳥を、わざわざ串から外して皿に移してから食べるのも手間である。

串から外すときにうまくいかず、「ガシャン!」と皿を鳴らすのもみっともない。

それをあえて行う状況を考えると、私には一つの状況しか思い浮かばない。

それは串盛りを注文して、皆でシェアする状況である。

せっかくいろいろな種類が混在している串盛りなのだから、少しずつ全部食べたいというのが本音である。

一口ずつ串をかじって回しあうという方法もないことはないが、衛生面とかいろいろ気になる部分もあるだろう。

そして飲み会というのは、そういうことを気にする人と気にしない人が混在するものである。

だから皆が快く焼き鳥をシェアする方法として、「串から外す」という行為がなされるのである。

こちらもまぁ、理に適っている。

 

私は焼き鳥は串から食べたい方である。

何が嫌って、あの串から外すのにあくせくしているのを見るのが嫌だ。

だから彼女と焼き鳥を食うときなどは、先にかじらせてから自分がかじるようにしている。

親しき仲にも礼儀はあるので、彼女が他人が口をつけたものを嫌がる可能性はあるが、私が後からかじるなら好きにしろといったところだと考えている。

だがもちろん、友人との飲み会ではそういうわけにもいかない。

だからそういうときは、黙って焼き鳥は串から外す。

 

個人的にはこんなことを議論することは不毛だと思うのだが、あえて解決策を提案するとすれば、上記のような焼き鳥を串から外すことを求められる状況において、串から外さずに食べる方法があれば良いわけである。

串から外さずに串盛りをシェアできればいいのである。

例えば、串盛り用に数種類の肉がついた串を準備するとか。

そうすればアラカルトなのに、串ごとに肉が違うということがなくなる。

ただしこの方法では、焼き時間の異なる肉を同じ串に刺すことに問題がありそうだし、タレで食べたい肉と塩で食べたい肉がある場合に、どちらか一つしか選択できなくなる。

あるいは肉と肉の間隔を離して串に刺したりして、串から食べてもお互いの口が触れることがないような串を開発するとか。

具体的にどんなものかは想像できないが。

 

店側が焼き鳥を串から食べることを求めるなら、これくらいの逆提案をしてこそカスタマーファーストである。

みんなで串から外さずに焼き鳥を食べる方法を考えついたなら、きっとその店の評判は上がるに違いない。

それが串にギミックを仕込むようなものなら、ついでに特許でも取ってしまえばいい。

本業以外で儲かることは間違いない。