異呆人

毒にも薬にもならない呟き

マクドナルドの復調 〜戦略の転換と忍耐〜

マクドナルドの業績が好調なようである。

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私はファストフードをあまり利用しないが、マクドナルドは安いし、そこらじゅうにあるので比較的よく利用する。

時間潰しで入ることも多い。

一時期は期限切れ鶏肉問題や異物混入問題などで客足が遠のいていたが、地道な改革が功を奏しているようである。

サラ・カサノバさんが日本マクドナルドCEOに就いてから不祥事続きだっただけに、彼女の運のなさは悲劇的だなと思っていたが、腐らずに改革を続けることで結果につなげようとしていることは尊敬に値する。

結構叩く人が多かったが、私は力のある人だと思っていたので、ちょっと嬉しかったりする。

 

ファストフードというのは、文字通り商品提供の「早さ」がウリである。

吉野家ではないが、加えて「安さ」や「うまさ」を押すこともある。

マクドナルドはどちらかというと、昔から「早さ」と「安さ」を前面に押し出していたように思う。

デフレ時代にはハンバーガーを50円にしたりしていた。

当時高校生だった私は、喜んで500円で10個買ったものである。

早い上に安いのであれば、利益を上げるためには数を売らなければならない。

つまり回転率を上げることが重要になる。

ラーメン屋が儲かるなどと言われるのは、この回転率が他の飲食に比べて高いためである。

逆に回転率が悪い形態の代表が喫茶店で、こちらは儲からない飲食としてよく挙げられたりする。

そりゃあコーヒー1杯で何時間も居座られたら、儲けなんて出ないだろう。

 

回転率を上げる手っ取り早い方法は、店の居心地を悪くすることである。

何時間もいられないような店にすればいい。

椅子を固くしたり、テーブルを小さくしたり、席間を狭くしたり、やり方はいろいろあるだろう。

立ち喰い蕎麦や立ち飲みバーのようなスタンディング形式の飲食は、この効果を狙った最たるものである。

立ったまま何時間も飲み続ける強者もいるだろうが、そもそも「早く食べる」、「ちょっと飲む」といった目的を持ってくる人が多いので、素直に回転率は上がる。

逆に回転率が低くても採算がとれるようにするなら、単価を上げるしかない。

そういった戦略をとっているのがスターバックスである。

スターバックスはそもそも「サードプレイス」という概念を打ち出している。

自宅でも職場でもない第3の居場所として、店舗を提供するというコンセプトである。

つまり長くいてもらうことを前提としている。

ゆえに単価は他のコーヒーチェーンと比べても高い。

だがそのコンセプトに呼応した客が来るので、デメリットがデメリットたり得ず、業態として成立するのである。

 

マクドナルドの居心地はかなり悪かったように思う。

「安かろう、悪かろう」の典型のような店だった。

もちろんテイクアウトする客もいるし、そもそも安さ目当ての客がほとんどなので、それまではデメリットが目立つこともなかった。

しかしデフレが緩んできてトレンドが「ちょっと高くて、ちょっと良いもの」になってくると、途端に苦戦するようになる。

高価格帯の期間限定メニューが当たることはあっても、店作りのコンセプトとはズレているので、大きな商品戦略の流れとはチグハグになるのである。

マックカフェと称して100円でそこそこ良いコーヒーを提供し始めたのもその頃だが、これもどこを狙っているのかわからない弾である。

持ち帰りコーヒーだけなら、別にマクドナルドでなくたっていい。

安さで引きつけて数を売るのか、ちょっと良いものを高めに売るのかが全体としては見えづらく、単発の商品勝負のようになっていた。

 

カサノバさんの取った戦略は、そんなマクドナルドの流れとは少し違っていた。

出店を抑制し、既存店舗の改装を優先することで、足元を固めにかかった。

これだけだと守りの戦略だが、改装する際に店舗の居心地を改善したのである。

狙いは家族連れを引き寄せることである。

これは2児の母であるカサノバさん自身がこだわりを持って打ち出したコンセプトであり、実際にたびたびそのようなコメントをしている。

もともと「ハッピーセット」などの子供向けの商品もあるし、店舗によっては個室のパーティルームを備えていたりもする。

私も小学生の頃、友人の誕生日会がマクドナルドのパーティルームで開かれていたりした。

ある意味では既存の資産を生かしながら打ち出せる、明快な戦略である。

 

居心地の良い店舗への改装は、高回転率の必要なファストフードのマクドナルドにとっては相反する戦略とも言える。

しかしながらまず客足を戻し、イメージを改善する上では効果的だったということだろう。

メニューもサイドメニューにサラダを取り入れたりと、従来の戦略とは真逆な取り組みもしていた。

マクドナルドに来る奴は、野菜なんて求めねぇよ」と私も思ったものだが、食べてみると意外とドレッシングが美味しくて、なかなかのコストパフォーマンスだなと思った。

ホームラン狙いではない、そういった地道な改善の積み重ねが、今結果として実ってきているということだろう。

カサノバさんの忍耐の賜物である。

 

単価の安いセットメニューを導入したり取りやめたりと、迷走していた部分もあった。

人材流出が進み、脇を固めるマネージャークラスのメンツが手薄だったという話もある。

それでも企業として、傷口の止血には成功したと言える。

そしてようやく収益がマイナスからプラスに戻ってきた今、改めて多様な世代から愛されるファストフードというものを求めていって欲しいなと思う。

まぁここまで書いておいてなんだが、それでも私はマクドナルドの魅力は安さだと思っている。

薄っぺらなハンバーガーでいいから、ぜひ100円で提供して欲しい。