異呆人

毒にも薬にもならない呟き

トランプ大統領で世界は変わるか?

最初に言っておくと、私はトランプさんが嫌いだ。

これは彼がビジネスマンとして有能かどうか、あるいは大統領の資質があるかどうか、政治手腕があるかどうかとは関係なく、個人的な好き嫌いのレベルの話である。

もう半年以上も前になるが、こんな記事も書いていた。

syuten0416.hatenablog.com

私は理念とか志とかを大切にしたいと思っている。

それでたとえ実利を損ねることになっても、自分が信じる正しさを貫くことの方が重要であると考えている。

トランプさんにはそういったものがない。

「偉大なるアメリカの復活」というのは理念のようにも聞こえるが、そのための手段を選ばないのであれば、利益が出れば何を犠牲にしてもいいと言っているのと同じである。

そもそも品位がない。

これはフィリピンのドゥテルテ大統領にも言えることである。

私はドゥテルテさんのやってることや、やり方自体は面白いなと思うこともあるが、あのマフィア紛いの言動や態度だけはどうにかならないものかと思う。

だからトランプさんの政策がどれだけインパクトのある有効なものだったとしても、あるいは実際に結果を残したとしても、最終的に彼を評価することはないと思う。

 

まぁ何を言ってもトランプ大統領は誕生してしまった。

アメリカが未だ「世界のアメリカ」である以上、その影響は世界や日本にとって小さくない。

もちろん、トランプさんが選挙中の公約をすべて実現するとも思えない。

選挙期間中もあれだけ発言を二転三転させている人物である。

二枚舌ならお手の物だろう。

とりあえず彼の選挙中の公約を見ながら、どんな影響があるのか考えてみたい。

 

TPPは抜ける

これは絶対にやるだろうなと思う。

現時点でも抜けると言っているし。

アメリカが抜けると発効はできない。

現時点でマイナスの影響はないかもしれないが、TPPを実現するために必死になって話をつけた後、金の話で辞任に追い込まれた甘利さんが少し可哀想になる。

TPPは賛否両論ある取り組みなのでなくなって喜ぶ人もいるだろうが、輸出企業を中心に経済界はガッカリだろう。

 

◯中国や日本の輸出品に大幅な関税をかける

「日本がアメリカ産の豚肉に38%の関税をかけるなら、日本車に38%の関税をかける」というような発言をしていた。

中国を為替操作国指定し、大幅な相殺関税をかけるとも言っている。

一昔前の貿易摩擦のような事態でも起こすつもりだろうか。

本当にやるかどうかは未知数だと思うが、実施されたら輸出企業のダメージは計り知れない。

現地に生産移管しているならともかく、そうでない企業は生産調整に走らざるを得なくなる。

それはつまり日本企業の雇用減につながる。

今は人手不足なのでちょうど良い気もするが、逆に人手不足感が解消すれば賃金が下方修正を受けそうである。

 

さらにもし自動車に高関税をかけられて、日本が報復関税をアメリカの農産物にかけようものなら、物価が上がるかもしれない。

まぁこれはアメリカ以外の国から輸入すれば済む話でもあるが、例えば吉野家の牛丼の牛肉のように代替の効かない品目については抜き差しならない話になるだろう。

あるいは自動車に関税をかけられるのを避けるために、逆に日本がアメリカの農産物にかける関税を下げるということも考えられる。

そんな内容を、新たに二国間協定を設けて実行するかもしれない。

そうなると日本の農畜産業の受けるダメージは大きいだろうが、私はこちらの方がまだマシだと思う。

 

法人税所得税等の大幅減税

法人税最高税率を現行の35%から15%まで下げると言っているのだから、すごい話である。

やることそのものは悪いことではないので、歴史に名を残す改革になるかもしれない。

ただし財源の手当はつかないだろう。

アップルなどのアメリカ以外に本社を移して法人税を払っている企業がアメリカ国内に戻ってきたとしても、大幅な税収減は避けられない。

ちなみにトランプさんは減税を掲げる一方で、インフラ整備など公共工事の拡充を訴えている。

入ってくる金を減らすのに、出す金は増やすという大盤振る舞いである。

 

普通なら、ない袖は振れない。

しかし日本でもアメリカでも、ないはずの袖を無理矢理作って振る赤字国債がある。

例えばアメリカが国家の収支のマイナス分を補うために国債を発行すれば、日本のように借金がどんどん増えるわけである。

日本などは逆に異常なのだが、通常は国債の増発や財政収支の悪化は金利の上昇に働く。

また、もし先ほど述べたように中国や日本からの輸入品への関税を上げるなら、それはアメリカ国内の物価の上昇につながる。

金利上昇と合わされば、相当なインフレ圧力になる。

金利上昇は通貨高につながるので、ここ数日の円安ドル高はこういったトランプさんの政策を見越した部分もあるだろう。

円安なら輸出企業にとってはプラスなのだが、高関税がかけられるならそうとも言えないのが難しいところである。

ちなみに、トランプさんはドル高を容認しないような発言もしている。

この辺りの整合性は、どうやって取るつもりなのだろうか。

 

◯メキシコに壁を作る

勝手にやってくれ、という話である。

メキシコに負担させると言っても、応じないのが普通だろう。

さすがに万里の長城よろしく壁を作るとは思えないが(作るなら格好の公共工事にはなるが)、移民の受け入れについてはかなり厳しくなるだろう。

ここは目玉政策でもあるので、確実に実行すると思う。

移民はアメリカ国民(この辺りは何をもってアメリカ国民と考えるのか難しいところだが)の仕事を奪うというのが、トランプさんの主張である。

なぜなら、移民は低賃金で働くから。

移民を受け入れないということはアメリカ国民の雇用と賃金上昇につながるかもしれないが、逆に企業側からすれば人件費増につながる。

コスト増は製品やサービスの価格増につながり、インフレの引き金になる。

他の政策と絡めて考えても、かなりの確率で自らの首を絞めそうな気がする。

仮にGDP世界一のアメリカ経済が混乱するようであれば、日本企業の業績に与える影響は大きい。

海の向こうの出来事で自分たちの給料が下がることもあるだろうから、他人事と断じることもできないだろう。

 

◯世界の警察をやめる

このあたりが理念のなさであり、良い意味でも悪い意味でも実利主義的なところだと思う。

どこで難民が出ようが、どこで人種迫害が行われていようが、自国に危害が及ばなければ知ったことではないということである。

そう言うのであれば仕方がない、というところでもあるが、そのスタンスが与える影響は様々ある。

例えば、実利さえあれば、外交面では中国やロシアとも手を組む、ということである。

ウクライナ南シナ海など、中国やロシアが好き勝手やっている地域も多い。

それを黙認するようなことになれば、当事国や近隣諸国に与える影響は大きい。

仮に世界的に政情不安が広がるようであれば、日本企業の経済活動に与える影響も大きいだろうし、何より東シナ海などは日本が直接当事者となる恐れもある。

尖閣取られても知らんよ」とアメリカが無視を決め込めば、中国にさっくり実効支配されてお仕舞いだろう。

それから北朝鮮問題も進展は見込めなくなるだろう。

正恩さんが暴走したとき抑え込む重しがないのであれば、日本は核ミサイルをぶち込まれるなど、やりたいだけやられることも考えられる。

 

これと絡むのが在日米軍の問題である。

トランプさんは駐留米軍経費の負担増、もしくは駐留軍の撤退を考えている。

負担増と言ったって、すでに日本はかなりの部分を負担している。

トランプさんがどの程度その事実を知って言っているのか疑問であるし、知らないのであれば大統領として大丈夫かと不安になる。

全面撤退というところまではいかないと思うが、仮にそうなれば日本の安全保障をどうするのかという議論が沸くだろう。

憲法改正がなされ、おそらく自衛隊自衛軍になるだろう。

でなければ、東シナ海北朝鮮の問題に十分に対応できなくなる。

というか、抑止力が効かなくなる。

仮に米軍撤退となれば、基地問題に悩む沖縄の人は喜ぶことになるのだろうか。

個人的にはかなり困ることになるのだと思うが、あれだけ基地移設に反対している人が多いのだから、どういう反応をするか興味のあるところではある。

 

以上のようなものだと思うが、別に明日明後日、すぐ世界が変わるわけではない。

だが2年後3年後の世界は大きく変わっていると思う。

既存政治に対する反発の強まりが飛び火すれば、同じく移民問題に悩むヨーロッパなどでは極右躍進で政治や外交のスタンスが変わることもあるかもしれない。

不穏な輩が、あちこちで自分勝手な理屈を振り回し出す。

それに対して、遠い海の向こうの出来事と我関せずではいられないだろうし、逆にそう思わないで身を引き締めることが必要だと思う。

今の政治や経済の状況一つとってみても、日本人は危機感にかけている。

今と同じような暮らしがずっと続くかのような錯覚を持っている。

日常が日常であり続けるのは、目に見えないところでたくさんの人が努力して維持しているからこそである。

その努力が根っこからひっくり返されるようなインパクトが起こったとき、こんなはずじゃなかったと思わないようにしたいものである。