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異呆人

毒にも薬にもならない呟き

引き際は本当に難しい 〜黒田選手引退に思うこと〜

私は野球に関しては、5歳の頃からドラゴンズファンである。

地元は大阪なので周りは阪神ファンばかりだったが、なびかずにドラゴンズを応援し続けている。

理由は単に、当時父が名古屋に単身赴任しており、深い意味もなく土産にドラゴンズのキャップを買ってきてくれたからである。

今思えば、子供というのはそういう何気ないきっかけが大切なのだろう。

「虎より竜の方が強そうだし」とか思ったのだから、く本当にただの子供心である。

今年は早々に結果すら見る気を失うような試合ばかりで、残念の一言に尽きる。

試合を作れる投手がいないことがとても痛い。

 

私は野球少年というわけではないが、小学生のときは地域のソフトボールチームに所属していた。

ちょうどJリーグができた頃であり、世の中はサッカー熱も旺盛だったが、私の周囲は主に大人たちが野球派ばかりだった。

小学生の頃にソフトボールチームの監督をしてくれていた人に、元プロ野球の2軍選手だった人がいた。

まだ電鉄系の球団がほとんどだった頃のプレーヤーである。

引退してからは仕出し弁当の店を営んでおり、そこの息子と私の弟が同年だったこともあり、家族ぐるみの付き合いをしていた。

褒めるのが上手な気の良い人で、チームメイトも皆その監督を慕っていた。

 

その監督は出身チームの贔屓なわけではなく、周囲が阪神ファンばかりだから阪神を応援しているようにも見えたが、特定の球団に肩入れするというより野球そのものが好きという感じの人だった。

しかし、そんな監督が「今に活躍するから皆で応援しよう」と語った選手がいた。

当時、広島カープに入団したばかりの黒田選手である。

黒田選手のお父さんが元プロ野球選手で、私のチームの監督と友人だったそうである。

なるほど、今この記事を書きながら改めて黒田選手の経歴をwikipediaで確認していると、少なからず縁のある人である。

そんなわけで「広島の黒田」というのは、私にとって少し特別な思い入れのあるプロ野球選手だった。

まさかその十数年後、海を渡ってメジャーで活躍する投手になるとは思いもよらなかったが。

 

黒田選手の活躍について私が今更とやかく言うことはない。

日本球界に復帰してからは「漢気」とよく言い表されるが、その胸を打つ活躍の源は、彼の義理深さと忍耐にある。

日本人男性の活躍を「侍」などと例えられたりするが、黒田選手こそスタンダードな「侍」である。

メジャーで今なお活躍するイチロー選手は同じ「侍」でも、剣の道を究めることを目指した求道者である宮本武蔵のような感じだとすると、黒田選手は忠臣蔵赤穂浪士のようなものだろうか。

だから日本人好みなのだと思う。

 

今回の引退において素晴らしかったことは、その引き際である。

仮にも6億もらっていて、今年も二桁勝っている投手である。

他の選手なら引退なんて考えないだろう。

例えば、今年同じように惜しまれながら引退する選手として、ベイスターズの投手、「ハマの番長」三浦選手がいる。

彼の場合、本人が言うように勝てなくなったから辞めるのである。

これはこれで潔い。

私が好きな、すでに引退したドラゴンズの投手である山本さんのように、身体の限界まで戦い続け、勝利を目指す姿はそれだけで胸を打つ。

そんなレジェンドの域まで届けばそれはそれだが、衰えも明らかになっているのに組織に残り続ける老兵は、老害と言われても仕方ない。

例えば戦力外通告を受け、それでも移籍先を探して現役を模索する選手の多くは、たとえ受け皿が見つかっても、幽かな残り火を燃やしてすぐに消えてしまう。

それなら、惜しまれながら良いイメージを残して現役を引退した方が、その選手とファンのためになると思う。

 

これは何もプロ野球選手に限ったことではない。

例えば企業の経営者にも同じようなことが言える。

70歳、80歳過ぎても元気に活躍することは悪いことではない。

だが、いずれ組織を去る日は来るのである。

過去の実績があるからこそ、自分や会社の良いイメージや良い状態はそのままに、後の世代にバトンを渡すことも大切な仕事である。

トップを退いてなお、名誉会長や顧問や相談役といった肩書きをもらって口を出す姿は、私はあまり良いものではないと思っている。

しばらく前に7&iの鈴木さんがゴタゴタの末にトップを退いた。

そこに至るまでの経緯はともかく、辞めると言った後に一切の職を辞すると言ったことは、潔くて良かったと思う。

結局、周囲の要請で相談役か何かに就かざるを得なくなったが。

 

この記事を書いている時点では、まだ黒田投手の最終登板は終わっていない。

ぜひ最後は勝利で花道を飾って欲しい。

いろいろな影響を考えた上での登板前の引退宣言であるから、対するファイターズも全力で迎え撃って欲しいと思う。

それが侍に対する礼儀でもある。

黒田vs大谷(打者)とか、想像するだけでなんとも感慨深くて仕方ない。