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異呆人

毒にも薬にもならない呟き

誰にでもある心の隙間 〜映画「君の名は。」を見て〜

随想

ネタバレはないと思うが、どうしても気になる人は読まないことを推奨。

 

しばらく前に流行りの映画「君の名は。」を見てきた。

きっかけは会社の同僚が「面白かった!」と絶賛していたことである。

私は比較的アニメは好きで、ジブリやディズニー映画を見に行くこともあるし、最近なら細田守監督作品が好きでたまに見る。

といっても他の趣味同様、いやそれ以上に力は入れていない。

君の名は。」の新海誠監督作品は、数年前に「秒速5センチメートル」をDVDで借りて見たことがある。

今回の「君の名は。」も、まったく気になっていなかったわけではない。

そんな話を彼女としていたら、「じゃあ見に行こう」となった。

 

さて、肝心の「君の名は。」であるが、素直に面白かった。

私はあまり奇をてらわない王道的な物語が好きだ。

ストーリーとしての捻りや、構成の妙はもちろんあるが、「君の名は。」も至って真っ直ぐな青春物語である。

秒速5センチメートル」で破壊的にセンチメンタルな結末を見せられた私としては、最後にきちんとハッピーエンドで終わらせてくれるかハラハラしたが、本当に最後の最後で安心させてくれた。

男女の青春を描き続けている新海さんらしく、細かい描写がリアルで説得力があるなと思った。

そして細部の安定感と美麗な映像が、きっちりと物語の本筋に没入させてくれる。

さすがである。

 

面白いのは面白いが、ここまでヒットしたのはヒットがヒットを呼んだ感はある。

とてもよくまとまっているが、頭抜けた何かがあるわけではない。

あえて言うなら、日本人の好みに合った映画だなと思う。

キーワードは「すれ違い」である。

新海さんの得意技で、「君の名は。」で貫かれているテーマでもあるが、日本人はこの「すれ違い」が好きだなと思う。

それから他に日本人が好きなキーワードとしては「喪失感」がある。

ひと昔前に大ヒットした「世界の中心で愛をさけぶ」は、この「喪失感」がキーワードだった。

これまた著者の片山さんが「喪失感」を得意技にした作家である。

「喪失感」をテーマにした作品は作りやすくウケも良いので、その後、金太郎飴か焼き増しのように、同じようなエンタメ作品が生み出され続けている。

 

物語をハッピーエンドで終わらせようとすると、どうしてもご都合主義になりがちである。

たとえご都合主義だったとしても、うまくまとまっていれば娯楽としては面白い。

ただご都合主義というのは、現実には怒らないからこそ痛快で面白いのである。

覚めた目で見れば共感しにくいとも言える。

反対にアンハッピーエンドとは言わないが、「すれ違い」や「喪失感」をテーマにした物語というのは、登場人物の人生というか運命というかがうまく運ばない。

「成就しない恋」だったり、「大切な人を失う」といった形で表される。

これはある意味では非常に共感しやすい。

大なり小なり、誰にでもうまくいかないことはあるからである。

というか、人生のほとんどのことはうまくいかない。

そういう誰にでもある心の隙間をうまくつけるのが、この2つのテーマでなのではないだろうか。

そしてもう1つ、日本人が非常に共感を重視する風俗を持っていることも関係しているだろう。

判官贔屓」というのも、この感覚の一つの表れだと思う。

チートな強者が大活躍する物語より、弱者が強者に立ち向かう構図の方が、日本ではウケが良いような気がする。

 

君の名は。」に話を戻すと、RADWIMPSの主題歌、および挿入歌も良かった。

これは単に、私がRAD好きだからというのもある。

映画を観終わってから、すぐに熱帯雨林でサントラを買ってしまった。

齢30を超えたおっさんのすることではないような気もするが、好きなものは好きなので仕方ない。

 

そういえば、しばらくアニメもご無沙汰である。

細田作品も、見たいなぁと思いながら放置しているものがたくさんある。

結婚して引っ越すときにはテレビを買う予定なので、そのときはDVDを借りて家で観ることを趣味の一つにしようか。

そうやって広く浅く趣味を増やしていては、時間がいくらあっても足りないのは目に見えているが。