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異呆人

毒にも薬にもならない呟き

「ちいさなあなたへ」

お題

今週のお題「プレゼントしたい本」

 

最近、あまり本を読んでいない。

そう言うと昔はさぞ読書家だったように聞こえるが、いわゆる「読書家」の読書量とは程遠い。

せいぜいが暇潰しに読んでいた程度である。

幼い頃は児童文学に夢中だった。

小学生の頃の夢に、小説家と書いた記憶がある。

中学生の頃は大して読書をしなかったが、高校生の頃はクラシックな小説をよく読んでいた。

夏目漱石とか太宰治とか、教科書に出てくるような文豪たちの作品をよく読んだ。

名作と呼ばれるようなものがどんなものか、興味本位で読んでいたようなものだった。

中でも夏目漱石はお気に入りで、文庫になっているものは全部読んだと思う。

 

大学生の頃からミステリーを読み始めた。

新しいものにいろいろと手をつけたが、森博嗣氏の作品が一番のお気に入りである。

最近はあまり追いかけていないが、エッセイなどを除いた作品は全て読んでいる。

あと、京極夏彦氏もお気に入りである。

この2人の小説家の作品は、私の好みにぴったりでとても面白いのだが、「箱本」と言われるほどに文庫本が分厚くなる共通点がある。

本当に、立方体を形成するのではないかという分厚さで、カバンに入れるのに大層難儀した。

 

私は森博嗣氏も京極夏彦氏も「好きな小説家」には挙げるが、「オススメの小説家」として人に紹介することはない。

私は好きだが、一般ウケはしない方だと思う。

むしろ好き嫌いが分かれる。

森博嗣氏の「すべてがFになる」をドラマ化すると聞いたとき、やめておけばいいのにと思ったくらいである。

だから「何か面白い本はない?」と聞かれたときは、伊坂幸太郎氏あたりを無難に勧めている。

伊坂幸太郎氏もとても面白い。

上記2氏と違って、わかりやすいエンターテイメント性もある。

 

かように、小説の好みというのは人によって違うものだと思っている。

だから小説をプレゼントすることはない。

面白い小説というのは、自分で読んで発見していくものである。

さらに私は小説以外の本をあまり読まない。

自己啓発書的なものは嫌っているので、なおさらである。

人にプレゼントしてまで勧めたい本など、なかなかない。

だが、そんな私が一度だけ人に本をプレゼントしたことがある。

それも絵本だ。

 

「ちいさなあなたへ」(作:アリスン・マギー、絵:ピーター・レイノルズ、訳:なかがわ ちひろ)

 

その本と出会ったのは、金融関係の個人営業をしていたときのことだった。

その日は顧客宅を訪問し、商品内容などの説明をしていた。

そして一通り仕事を終えると、お茶をいただきながら雑談をしていた。

どういうきっかけだったか、はっきり覚えていない。

そこのお宅には2人の幼いお子さんがいた。

子供たちを見て、私が「自分も子供が好き」と言ったことがきっかけだった気がする。

そこの奥さんが「子供が好きならぜひ読んでみてほしい絵本がある」と言って、別の部屋から絵本を持ってきた。

それが「ちいさなあなたへ」だった。

 

奥さんは、その絵本を人からプレゼントされたらしかった。

読んで感動したので、私に勧めてきたらしい。

「絵本だけど、子供に読む本というより、子供ができた親に読んでもらいたい本」、と説明してくれた。

絵本なので、すぐ読んでしまえる。

奥さんの目が促していたので、私はその場で読んでしまった。

私は天邪鬼のへそ曲がりなので、人から勧められたものには多少ケチをつけたくなるタイプだが、「ちいさなあなたへ」は素直にいいなと思える絵本だった。

内容は説明しても伝わりにくいので読んでみてもらいたいと思うが、実に味わい深い絵本である。

涙を流すような感動ではなく、心に染み入るようなしみじみとした後味を残してくれる。

私はその本を紹介してくれたことについて、奥さんにお礼を述べた。

そして自分の心の本棚にきっちりしまっておいた。

 

プレゼントしたのは、友人に子供ができたときだった。

出産祝いを贈るにあたって何がいいか考えていたとき、その絵本のことを思い出した。

内容的にも重くなく、相手を選ばずに勧められる。

値段の高いものではないので、贈られる方も気軽に受け取れるし、ありふれていない。

何より、本当に読んでみてほしいと思える本である。

贈った友人も、「良かった」と言ってくれていた。

 

自分に子供ができたときは、今現在、妻になる予定の人に読んでもらおうかなと思う。

彼女は涙腺がゆるいので、泣き出してしまうかもしれない。

読んで、そして読み継いでいくに相応しい本である。