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異呆人

毒にも薬にもならない呟き

切れ者の老兵

仕事で炎上した。

syuten0416.hatenablog.com

以前書いたこの案件である。

上司の代わりに仕事を頼まれて出張ったら、まさかの落とし穴だった。

私の対応が悪かった部分もあるので半分くらいは自業自得だが、そもそも解決方法のない案件であり、貧乏くじを引いた感が多少ある。

まぁ何を言っても詮無いこと。

時計の針は戻らないし、覆水は盆に返らない。

罵倒による精神的ダメージはなかなかのものだったが、そうは言ってもいられないので、荒れた翌日に件の上司のBさんを含めて対応を検討した。

システムの不備はどうしようもないので、それ以外の部分で特例的な対応方法を検討することになった。

そうなるともう私の出番ではなく、各部署長を交えての大議論である。

そもそもシステムに不備があることが問題なので、根本的な解決方法を議論する良いきっかけにはなったかもしれない。

火に油を注いだ本人が言うセリフではないが。

 

このときに一緒に対応を検討したメンバーにCさんという人がいる。

財務関係の部署の所管をしている役員で、齢はとうに60を超えているものと思われる。

営業部署の私からすると普段は接点のない人で、朝早めに出勤し、ほぼ定時に帰宅する姿を目撃する程度である。

社内では「ふがふが喋る人」ということで有名だ。

入れ歯なのか何なのかよくわからないが、「Cさん語」と言われるほど判別の難しい日本語を操るという噂である。

加えて、「そんな感じだけど切れ者」という噂も聞いていた。

いずれも直接話したことがない私からすると、噂の域を出ない話だった。

 

ちなみにこのシステム不備の案件、全容と問題点を把握している人間がほとんどいない。

たぶん一番核心に近い位置にいるのが私である。

だから件の使えない上司のBさんや、他の上司を交えて話をしてもラチがあかなかった。

上司たちが出した答えは、「特例対応が必要だろう」ということだけである。

そしてこの特例対応を検討する上で、その場に呼ばれたのがCさんだった。

私はCさんに事の経緯と、考え得る問題点と対策を説明した。

Cさんはこの問題について以前にも話を聞いたことがあるようで、すぐに事態を飲み込んで対策方法について語ってくれた。

それは以下のようなものだった。

 

①システムの改修は絶対に必要。

②それまでは特例対応するしかないが、それは法律的な問題はなく内部処理の問題なので、その処理をする部署が対応してくれるかどうか(その部署と協議しろ)。

③本当はシステム改修時に、もっといろんな機能を加えたら良いと思う。ただそれをしてまでそのシステムを勧めるかどうかは、全体的な商品戦略の中で議論しないといけない。

 

ざっくりとそんな感じの話をされた。

①と②は目の前の事案に対する具体的な対策であるが、私はCさんが③のような全体的なところまで突っ込んで考えていることに感銘を受けた。

うちの会社はその商品戦略が曖昧だから迷走するのである。

syuten0416.hatenablog.com

以前にも書いたが、戦略を明確にしてこそ、個々の戦術が確定するのである。

そういった議論抜きにシステム改修だけやっても、また時間が経てば別のところで別の問題が出たり、改修したシステムを生かしきれなかったりする。

Cさんの言うことは私の考えていることに近く、私は「仰る通りです」と深くうなづきながら聞いていた。

やや財務の専門用語を交えながら語っていたが、私も少しは勉強したことがあるのでなんとか理解できた。

「Cさん語」と言われる独特の話し方も、日本各地を渡ってきて方言に慣れ親しんでいる私からすれば、聞き取りにくい方言の一つのようなものだった。

他の上司をそっちのけにして、私はCさんと対策を語り合った。

 

Cさんは普段まったく目立たない。

半分隠居のような身なので、のんびり仕事をしている風である。

ところが一度知恵を必要とされれば、なんとも明快な答えを提供してくれる。

これまでは、「大して仕事もせずに定時勤務で余生を過ごしている老人」と思っていた。

が、とんでもない。

それは世を忍ぶ仮の姿で、実は老いてなお切れ味鋭いもののふだった。

彼はその知恵を必要とされて会社にいるのである。

なんとも素敵な人だなと思った。

体力は衰え、歯が抜けてふがふが話すようになっても、活躍することは可能なのである。

「一線で活躍する」というのとは違うが、そういう燻し銀の働き方もあるのだ。

たとえ、禿げたり、太ったり、背中が曲がったり、加齢臭がするようになったとしても、Cさんのような歳の取り方をしたいなと思った。