異呆人

毒にも薬にもならない呟き

久しぶりの面接②

前回の続き。

syuten0416.hatenablog.com

 

 1週間ほどして、書類選考の結果がメールで届いた。

予想外のことに、書類選考を通過してしまった。

私は転職回数の多いジョブホッパーである。

だからそれだけで落とされることも多い。

経験者であることが評価されたのか、あるいは持っている資格が評価されたのか、何なのかはわからない。

ただ面接を受けなければならなくなったことは確かだった。

それから改めて持参する履歴書と職務経歴書を作った。

データは手元にあるのだろうから、もうそれでいいのではないかと思うのだが、そういうわけにもいかないのが世の中の習わしである。

写真がデータでしかなかったので、わざわざ1枚だけ撮りに行った。

当日はちょうどゲリラ豪雨に遭遇し、もう面接を受けに行く前に心が折れそうになった。

 

面接を受けに行く前に、エージェントの担当者と10分ほど会って話をすることになっていた。

それで特に何が変わるわけでもなかろうが、面接先の最寄駅で合流し、その企業の建物まで歩きながら話をした。

転職理由とか諸々の、この場合には当たり障りのない話をした。

目的地まで着いて別れる前、担当者から「朱天さんって、自己アピールが苦手ですよね」と言われた。

それは全くその通りである。

歩きがながら短時間話をするだけでそれがわかるとは、ベテランの風貌だったが、中身も同じくらいベテランのプロフェッショナルだなと感じた。

 

正確には自己アピールが苦手というか、嫌いなのである。

「自分にはこれができます!」とか堂々と話すのが恥ずかしく感じる。

口だけの人間は世の中多い。

だから私自身がそうなのだが、実際にやって見せてもらうまでは信用しない。

自己アピールなんかしなくたって、やって見せればわかるのだから一緒だろうと思ってしまう。

しかし採用面接はそうもいかない。

仕事をやる前に、書類と話術で判断されるのである。

口だけならなんとでも言えてしまうという自意識が自制を促すのだ。

選挙なども、まさにそうではないかと思う。

実際に仕事をやって見せるわけにはいかないから、公約や演説で判断することになる。

だからリップサービスが横行し、碌でもない輩が口だけで選ばれてしまうことになる。

本当に恥ずかしい。

 

面接は特筆すべきことはなかった。

聞かれた質問は一般的だったし、さほどマズイ回答もしなかったと思う。

ただうまく答えられたかというとそうでもない。

落とされても仕方ないと思えるレベルの出来だった。

自己アピールもそうだが、私は意欲もあまりうまく伝えられない。

仕事に意欲などないから当然なのだが。

あと、案内を担当してくれた人事の女性が可愛かった。

それから筆記試験があるのをすっかり忘れていた。

シャーペンは常に持ち歩いているが消しゴムがなかったので、1,2カ所直したい間違いがあったがそのままにした。

どれだけやる気がないか知れる。

 

それなりの企業なので、そのまま進めばあと2回ほど面接を受けることになると聞いた。

自信がないというよりは、その煩わしさにげんなりする。

もう落ちてればいいのにという気持ちと、給料が増えるし将来が安定するという事実が心の中で錯綜する。

普段は受けたからには最後まで徹底して合格を狙うのだが、今回は珍しく迷っていた。

それは現状に対する不満が強いわけではなく、将来というまだ見ぬ不明瞭なものに対する不安が大きいことが動機だからだろう。

たぶん面接を受けた企業の方が、将来に渡っても待遇が良い。

ただ本当にその通りかはわからない。

それは今ある条件から想像できる未来の話だからである。

「やりたい」がない私には、判断がつきかねる。

 

そんなこんなでウジウジしていたら、次回面接の案内が来た。

つまり1次面接を通過してしまった。

ただ実は1次面接で2人の担当者と会う予定が1人しか会えなかったらしく、次が1.5次面接のような感じになると言われた。

先方も同じく、私に対する判断がつきかねているのだろうか。

そういえば、今の会社の面接を受けたときも同じような感じだった。

営業部の上司と予定が合わず、人事担当者と2回も会った。

最終的に今の上司は私に会っても採用の判断がつけきれず、人事担当者が背中を押したと聞いている。

 

先に進むという話になって、私は初めて彼女に相談した。

私自身が間違いなく転職するという決意がなかったので、ある程度方向性が固まってから相談しようと思っていた。

ここから先は、万が一は転職という可能性がある。

話をしないわけにはいかない。

私は転職した場合としなかった場合について、できるだけ客観的な情報を彼女に提供した。

私もどちらが良いとは言いかねる。

自分が決断の責任を回避するようで申し訳ないが、一緒に人生を歩む彼女に判断してもらおうと思った。

 

彼女の答えは明確だった。

「転職して出張生活が続いて、会える時間が減るなら転職しないでほしい」とのことだった。

お金より私と会う時間を優先したいらしい。

10年後も同じセリフが言えるだろうかと意地悪なことも思ったが、私自身が判断をつけかねている事案なので、彼女の気持ちを優先することにした。

翌日、エージェントの担当者に断りのメールを送った。

 

なんとなく受けた面接で、なんとなく進んでいって、そして結果的に断ることにした。

あまり決意とか気概とかがない出来事だったが、終えて振り返ってみると、もしかしたら人生におけるターニングポイントの1つかもしれないと思った。

シミュレーションゲームの選択肢が出てくる場面である。

人生はこういった小さなターニングポイントを積み重ねて進んでいく。

たくさんの「もし」を切り捨てて生きてきた結果が今である。

この経緯を経たため、私は今の会社がなくならない限りは、今後転職を選択肢に入れないだろう。

それは家庭を持つ決断をしたからであり、そして今回転職活動をしたからである。

選んで捨てて進んだ人生に、私は自分が何を求めているのだろうかと、改めてぼんやり考えた。