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異呆人

毒にも薬にもならない呟き

人間という生き物

随想

私は性善説が好きではない。

モラルとか慈愛といった善なるものを、生まれながらに持ち合わせているという考えは違和感がある。

だからといって人間が性悪であると思っているわけではない。

善悪といった価値観はとても人間的で、つまりは人間が考える後付けの解釈だと思うのである。

私は人間が人間である前に、動物であると思っている。

当たり前の話だが、それが一番の前提条件なのである。

 

だから生きる意味などないと思っている。

なぜ生きるのかという問いに対する答えは、人間が生物だからである。

生物だから生きるように遺伝子に仕込まれている。

だから生きるのである。

そこに意味を、因果を見出そうとするのは、とても人間的な行為である。

それは理屈としては筋が通らない、あるいはご都合主義だと思うが、悪いとは思わない。

人生に何らか意味を見出すことで生きやすくなるなら、それも戦術として一つの形である。

 

世界から争いがなくならないのも、人間が動物だからである。

縄張り意識や、生存や子種を残すための闘争は、動物であれば当たり前のように持ち合わせている。

その必要がなくなっても争いたがるのは、つまりはそういう生き物だからである。

格闘技やスポーツがこれだけ歴史を持って続いているのは、それがそんな動物的欲求を合理的に満たす方法だからである。

個体差はあるが、私たちは何かと順位をつけたがるし、競争を好む。

 

例えば、だから争いがなくならないのは仕方がないと考えて、その解決の努力を怠るのは間違っている。

人間が動物であるのは間違いないし、それにより影響される部分も多い。

しかしそれは動物的ではあっても人間的ではない。

人間的なもの、他の動物と異なりそれをもって人間たらしめるものは理性である。

だから話し合いにより解決を図ること、本能を抑え、争いを防ぐことは人間的である。

 

よく愛情とか感情豊かなことをもって人間的だと言われることがある。

だが、愛情とか感情の豊かさは動物的なものである。

だからある意味では非常と言われる判断こそ、理性的な判断こそ人間的であると言える。

私が好きな作家の森博嗣氏も、確かエッセイにおいて同様のことを言っていた。

その通りだなと思って読んだ記憶がある。

また以前にどこかネットで読んだサブカル論にも、そんなことが書いてあった。

曰く、漫画やアニメなどのサブカルチャーにおける主人公側の理屈は、「愛は地球を救う」的な感情論であり、非論理的で動物的であると。

むしろサブカルチャーにおける悪役には、そういった感情論を排し、地球のため人類のためを思って極論に走る者がいる。

そういった理性に基づく行動を行う者の方が、人間的と言えるのでないかと。

 

善悪というものは、見る方向によって色を変える。

そういった主観を排して、人間を動物としてシンプルに考えると簡単なことは多い。

自分たちの周りにいる理不尽に思える人たち、自己中心的な人たちも、そういった動物性の延長線上にあることが多い。

例えば保身というのは、生存本能がそうさせるのである。

利己的なのも、自分を生かすための動物的・本能的なものである。

頭が足りないんだな、くらいに思っておけばいい。

それを社会的に位置付けて、悪であるとか、あるいは逆に善であるとすることに、それほど意味はない。

そんなものは後付けである。

そもそも本能であるなら修正は難しい。

よほど痛い目を見ない限り、そういった習性は直らないものである。

 

ときどき生きにくさを感じるときは、私もそう思って割り切るようにしている。

人間の社会というのは複雑である。

飯を食うためだけに生きている動物とは違う。

食べられなければ死ぬだけの動物とは違う。

特に日本のような高度化した社会において、私たちは既成のシステムから多くの物事を要求される。

食べられなくても生き残れるように、社会的なセーフティネットも充実している。

それは良いことなのかもしれないが、いわばゲームオーバーになっているのにゲームが終わらないバクのような事態も引き起こす。

詰んでいるのに終われない。

 

でも人間は動物なのである。

どうあっても、生きていられるうちは生きていくものなのである。

いずれ死ぬ。

それまでの短い期間の話である。

みっともなくたって、惨めだって構わない。

死ねば皆同じ屍である。

何か無為で気を紛らわせるだけの楽しいことでもして時間を潰せばいい。

BUMPの「HAPPY」という曲の歌詞を、私は同じように解釈している。

「どうせいつか終わる旅を 僕と一緒に歌おう」

そう、どうせいつか終わるのだから、歌でも歌って過ごせばいい。