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異呆人

毒にも薬にもならない呟き

モテとファン

「モテるでしょ?」と30歳に近づいた頃から言われるようになった。

私は人生においてモテた記憶などない。

それは「モテ」をどう定義するかによるだろうが、私は「愛の告白を受けた回数」だと勝手に考えている。

私は好意を強烈にアピールされたことは、人生において何度かあるが、「好きです。付き合ってください」とまで言われたことはほとんどない。

だから私はモテたことがないと思っている。

 

例えばバレンタインデーなども無縁のイベントだった。

そもそも小中学校はお菓子を持ち込んではいけなかったので、他の人もほとんど貰っていなかったような気はする。

高校は単純に、私に渡そうなどという女子が存在しなかった。

唯一記憶にあるバレンタインの思い出は、小学校3年生のときに家までチョコレートを持ってきてくれた女子がいたことである。

マンションの1つ上の階の同じ歳の女の子だった。

たしかホワイトデーのお返しに、母が準備したキャラメルの花束を持って行った記憶がある。

ただクラスが別だったのであまり会う機会がなく、お菓子のやり取りだけで終わった。

 

小中学校では、やたら好意をアピールしてくる女子が何人かいた。

「朱天くんは私が好きなんだから」みたいに周りにも公言し、やたらと絡みたがった。

しかしこのレベルまでくれば、最早本当に好きかのか、ただのネタなのかわからない。

小学校の頃のそういった女子は、卒業式でそそくさと帰ってしまった私と写真を撮るためだけに家まで来たりした。

だがそれだけである。

今思えば、「ファン」のような気持ちだったのかもしれない。

 

そういえば、いつも「ファン」みたいな立ち位置の女性はいたかもしれない。

高校の卒業式の日に、友人の女子に付き添われて私の席まで来て、「隠れファンでした」と言った女子がいた。

私がぽかんとしていると、「えっと、それだけです!」と言って去っていった。

また部活の後輩から貰った色紙に、同じく「隠れファンでした」と書いた後輩がいた。

私はどれだけ表立って好意を表せないような、ファンと言うのを憚られるような人間だったのだろう。

 

また他の部活の後輩女子が私をチヤホヤしたとき、やっかんで「だったら先輩は彼女がいないんだから、付き合ったらどうだ」と言った後輩男子がいた。

言われた後輩女子曰く、「先輩は私たち皆のものだから、誰も手を出さないって決まってるの」ということだった。

「いやいや、そもそも誰のものでもないから」とツッコんでおいたが、これも「ファン」のようなものかもしれない。

 

「カッコいい」などと言われたことはない。

容姿を褒められるときは、「綺麗」などという中性的な表現をされた。

確かに見た目は男らしさとは無縁である。

中身はその綺麗さとはさらに無縁の、前衛的な性格をしているので、最早遠巻きに眺めるしかないのかもしれない。

芸能人の誰かに似ていると言われることはない。

「俳優にいそう」とか「昼ドラとかに出てそう」という、漠然とした表現をされたことはある。

 

まぁ、恋愛する気のなかった私にとっては、モテるかどうかなんてプロ野球の結果以上にどうでもいい話だった。

「ファンです」なんて言われてもどこ吹く風だったから、「ファンです」で終わっていたのかもしれない。

最近になって「モテるでしょ?」なんて言われるようになったのは、私の中身が少し落ち着いて、一般人が受け入れられる水準になったことがあると思う。

確かに多少モテるようにはなったかもしれない。

ただその分、面倒事が増えた。

これならアバンギャルドな性格のまま、「ファン(で十分)です」と言われていた方がマシだったかもしれない。

モテて嬉しいなんて言う人間の気が知れない。