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異呆人

毒にも薬にもならない呟き

メンタルが鋼

先週くらいからずっと胃が痛い。

会社でそのことを話したら、「疲れてるのではないか」と言われた。

実際、堪りかねて週末に病院に行ったところ、「風邪ではないか?」と言われたので(確かに風邪の症状も多少あった)、「疲れ」が原因であるという推測は間違いではない。

ただ、「胃が痛い」と言えば、ストレスとか精神的な原因を疑いそうなものである。

しかし同僚たちの中に、激務による疲労を心配する声はあっても、ストレスによる精神状態を心配する声は一切なかった。

たぶん、私に心労などあろうはずがないと思っているのだろう。

 

以前、会社の先輩に「お前はメンタルが鋼だからな」と言われたことがある。

どんな文脈だったかは忘れた。

何をもってそう言われたのかもわからない。

ただ、周囲の人間が私に対してそういう評価をしているということは確かだった。

確かに今の会社での態度を鑑みても、上司に平気で楯つくし、厳しい批判をするし、窮地に陥っても慌てないので、そう言われても仕方ないと思う。

私だって人間なので、辛いときもあれば、凹むときもある。

だが周囲の人間と比べると、何があっても動じない方だとは言えるかもしれない。

そういえば、学生時代にゼミで初めての発表をしたとき、「いや〜、緊張しました」と先輩に言ったら、「朱天くんでも緊張するんだ」と、しれっと言われた。

「当たり前じゃないですか、私だって同じ人間ですよ」と返したら、「えっ、そうだったの?」とさらに返された。

もはや人間扱いすらされていない。

 

見た目が華奢でナヨナヨしているような雰囲気だから、中身とのギャップが余計に映えるのかもしれない。

最初に勤めた会社では、「入社したときは、こんな職場だと自殺でもしそうな奴に見えた」と言われた。

それを当初の感想として私が耳にしたということは、実際には殺しても死ななそうな人間だったということである。

 

昔からそんな人間だったわけではない。

むしろナイーブで他人の顔色ばかり伺うような人間だった。

自己改造を経て究極の冷静さを手に入れてから、今のような鋼と言われるメンタルになってしまった。

高校の頃くらいから、心身ともにタフだと言われてきた。

部活動においても怪我や病気はほとんどしなかったし、精神的にはカオスだったと思うのだが、それでも思春期特有のナイーブさのようなものはほとんどなかった。

ガラス細工のような繊細な心というよりは、粘性のあるタールのようなドロドロとした内面を抱えていた。

それでいて反骨精神もあったので、大人からすると中途半端に弁が立つだけタチの悪い、相手にしたくない少年だったと思う。

 

そんな少年がそのまま大人になり、30歳を超えてしまった。

弁が立つだけでなく、より狡猾になり、相手を言い負かすだけでなく、わざと負けてみせて相手を持ち上げるような真似もするようになった。

相手を良い気分にさせて陰で笑うという、陰湿なことも平気でする。

かと思えば、役員相手に正面からケンカをすることも厭わない。

本当にロクでもない。

目上を目上とも思わず正論を吐き続ける様が、「メンタルが鋼」という評価の一番の原因だと思う。

 

まぁ精神的にタフで、私自身が損をすることはない。

なんと言われようと、どうせ我が道を行くだけなのであまり変わりはない。

他人に迷惑をかけていないのであれば、堂々としていれば良い。

「メンタルが鋼」と言われたとき、「それって褒め言葉ですよね?」と念のため聞いてみた。

返ってきた言葉は、「半分はな」だった。

残り半分がなんだったのかは、あえて聞かなかった。

半分褒められているならそれで十分でないか、と思った。

そんなところも鋼のメンタルの由縁かもしれない。