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異呆人

毒にも薬にもならない呟き

スカウターで仕事力が測れたら

今の仕事に就く前、転職活動中のときのことである。

当時、辞めることを会社に伝え、有休消化中に転職活動をしていた。

実家に戻るつもりはないし、蓄えもほとんどない。

むしろ奨学金が残っていた。

だから次の仕事を少しでも早く決めるため、いわゆる転職エージェントに片っ端から登録していた。

いくつか希望条件はあったが、やりたい仕事はない。

自分で探して都度履歴書を書いたり、いろいろ段取りをするのがめんどくさかった。

エージェントは担当者個人の能力に依存する部分が大きいし、担当者と自分自身との相性もある。

だが、面倒くさがりの私にはちょうど良い。

 

ある大手のエージェントを利用したとき、登録前にテストのようなものを受けさせられた。

新卒が利用する就職サイトで適性検査みたいなものをやらされるならともかく、中途採用者向けのエージェントでテストというのはよくわからない。

中途採用第2新卒でもない限りこれまでの仕事の実績だけが評価され、ポテンシャル採用なんてありえないと思っている。

まぁそれほど難しいものでもなさそうだったので、とりあえずやってみた。

結果は面談の時に教えてくれるらしかった。

 

そこのエージェントでの面談は、ごく普通のものだった。

私のこれまでの仕事内容や実績などを確認し、希望条件を擦り合わせた。

この流れはどこのエージェントに行っても同じで、ほとんど機械的と言ってもいい。

一通り話をして、いくつかの案件を見せてもらう前に、担当者が「あぁ、そうそう」と思い出したように言って封筒のようなものを取り出した。

「先日受けてもらったテストの結果です」と言って渡された封筒には、テスト結果の記載された用紙が入っていた。

読解力とか計算力などを基礎、応用に分けて10項目ほどで採点されていた。

私は1項目だけ1問間違えただけで、総合評価が10段階の10だった。

「私も総合評価が10になる人は初めて見ました。それは相対評価のテストなので、10というのはテスト受験者の上位3%ということです。あなたの能力はどこの企業でも通用すると思いますよ」と、エージェントの若い男性は説明してくれた。

私はこんなペーパーテストの結果が転職活動に影響するとは思わなかった。

エージェントの担当者自身も、話のネタ程度に取り出したように感じた。

そこからは普通に紹介案件の話になったわけだが、別にその会社の案件が他より良かったということはなかった。

 

実際、私の基本能力は高めだとは思う。

IQも何度か測ってもらったことはあるが、常に126〜128だった。

だが私は学歴が良いわけでも有名企業に勤めているわけでもない。

そういった方面への努力をしてこなかったのだから当然である。

しかし学歴や勤め先が良くないからといって、自分の仕事力が低いとも思っていない。

エリートヅラしてる輩と伍して戦えるくらいの実力はあると、密かに思っている。

まぁ、実際にそんな輩と同じ仕事をする機会は今後一生ないだろうから、私のその自信は「俺はやればできる」と思っている奴のそれと大して変わらないだろう。

 

RPGで言えば、私は自分が魔法剣士のような存在だと思っている。

力も魔力もそこそこ高くて、アビリティも広く浅く使える。

ストーリーの序盤であれば、使い道も多くてパーティに必須のメンバーになれる。

だが大抵のRPGにおいて、魔法剣士のような存在は終盤で使い物にならなくなってくる。

剣術も魔法も中途半端にしかマスターできず、最終的にその道のエキスパートに比べて見劣りしてくる。

基本ステータスがいくら高くても、アビリティが極められないから弱い。

FFでいうと、Ⅴの赤魔道士のようなものである。

「白魔法も黒魔法も使えて強いじゃん!」というのは一瞬の話で、最終的には「〜ガ系魔法が使えないなんて、使えねぇ」とプレーヤーから袖にされるのである。

 

現実の世の中でも、尖ったスキルを持っている人材は強い。

多少ニッチであっても、需要があれば引っ張りだこである。

IT系のエンジニア(それもいろいろ技術の種類があるようだが)は常に人不足のようだし、語学が堪能であればそれだけで決まるような仕事もある。

看護師の友人が転職活動をしていたとき、彼は引く手数多の状況にびっくりしていた。

「〜ができます!」と自信を持って言える人材は強い。

基本能力が高いことなんて、何の役にも立たないと思われるのが関の山である。

 

私は営業の仕事しかしたことがない。

モノを売ることには自信があるが、面接の場で相手の目の前で売って見せる機会はない。

面接の場でのやり取りと、営業の場でのやり取りは全く異なる。

だから「これは!」と思って採用しても使い物にならない人もいれば、「微妙だなぁ」と思いながら採用したら意外と活躍したりする人もいる。

私は自分の良さは実際に使ってもらうまで実感してもらいにくいと思っている。

それは単に私がアピールが下手だということもあるが。

 

そもそも恥ずかしくないだろうか。

「営業ができます!」と言ってしまうことは。

資格に基づいた仕事や、技能が必要とされる仕事ならいい。

だが営業という仕事は、仕事をするだけなら誰でもできる。

上手にすることが難しい仕事なのである。

そして上手に営業をするということは、意外と言葉にならないニュアンスの部分があると感じる。

理屈でシステマティックに「こうして成功してきました」なんて説明できる人は、大抵がその1本槍しか武器に持たない人である。

営業が対人折衝の仕事であるからには、相手によって対応を変える必要がある。

「こうやれば上手くいく」なんて思っている方が危ないと私は思う。

 

いっそドラゴンボールスカウターのように、一発で仕事力を数値で計測してくれる機械が発明されてほしいと思う。

そしたらあれこれ回りくどい説明はせず、「私の仕事力はご覧の通りです」と言えば済むようになる。

人事評価だって楽になるだろう。

でも意外と自分の仕事力が低かったらどうしよう。

それはそれで、力を磨く良い機会になるかもしれない。

何より、役に立たない上司の無能っぷりが白日の下に晒されることになるのが良い。

ぜひ、誰かに発明してもらいたい。