異呆人

毒にも薬にもならない呟き

異端①

仕事で実家近くへの出張が入ったので、実家に泊まることにした。

前日に泊まると連絡してあったが、当日朝になって「家が水漏れで工事をしているから寝る場所がない。リビングで雑魚寝になる」と連絡があった。

実家には両親と妹と下の弟がいる。

リビングは狭くはないが大の大人が5人も寝られるか怪しい。

早く教えてくれれば宿を取ったものを。


仕事を終えて実家に帰ると、玄関からブルーシートで養生されていた。

そもそも「水漏れで工事」というメールの文面だけでは状況がわからなかったが、めんどくさくて深くは聞かなかった。

どうやらマンションの上層の部屋が水漏れを起こし、天井が広範に壊滅したらしい。

浴室・洗面所と部屋2つの大掛かりなリフォームで、思い切ったことをしたなと思ったが、おそらく保険が効くのだろう。

どうせリフォームを検討していたから儲け物かもしれない。


珍しく、すでに家庭を持っている上の弟以外の全員が揃っていた。

大体がそれぞれの仕事や遊びの都合でおらず、実家に帰っても夕飯は母と2人だったりすることが多い。

全員で夕飯を食べると、下の弟は自分の部屋から持ってきたTVでゲームに夢中、他の家族はリビングのTVでバラエティ番組に夢中になった。

PS4の画像スゲェな!と下の弟がコールオブデューティーをプレイするのを見ていたが、すでに家庭用ゲーム機を引退した私には、動きが早くて見ていても意味がわからなかった。

バラエティ番組にはもとより興味がない。


仕方なくスマホをいじっていたが、TVの音がうるさい。

実家の家族は結構な音量でTVを視聴する。

私が実家で泊まるとき用に耳栓を買ったほどである。

その日はリフォームのために浴室が使えなかったので、スーパー銭湯に行く予定だった。

だが一向に動く気配がない。

時刻は20時を回った。

私が催促すると、「そろそろ行こうか〜」という返事だけが返ってくる。

そのまま待つこと15分、動きそうになかったので先に1人で行くことにした。

皆で車で行けば楽だが、歩いたって15分もかからない。


スーパー銭湯に行っても、のぼせやすい私は烏の行水である。

風呂に入ったという事実に満足してしまうので、入っていることが気持ち良くて長湯してしまう、なんてことは少ない。

それでも温泉は好きだが。

帰り道、倒れている浮浪者がいて、老年の夫婦が救急車を呼んでいた。

その程度の治安の地域である。

帰りにコンビニで白くまを買って食べたことが、一番の幸せだった。

ちょうど実家に着くと、家族が銭湯に向かうところだった。

時刻は21時半を回っていた。


私が早々に家を出たかった一番の理由はコレである。

生活様式が合わない。

例えば私は朝型の人間なので、朝5,6時に起きて夜は日が変わる前に寝る。

私以外の家族は日が変わってから寝始め(もしくはTVを見ながらいつの間にか眠りに落ち)、朝は7,8時頃に起き始める。

また私はTVを見ないが、他の家族はTVが大好きである。

海外の連ドラもしょっちゅう借りて見ていたりする。

人が寝ようとしているときに、ジャック・バウアーの叫び声とか聞こえたらイラっとする。

あと私はタバコを吸わないが、両親も弟妹も喫煙者である。

とにかく違う。

本当に自分がこの家族の長男なのか疑いたくなる。


私は幼い頃から、親戚の中でも異端児扱いされてきた。

それは主に学力からであった。

うちの家系は軒並み低学歴である。

両親とも高卒だし、兄弟の中でも大学まで出ているのは私しかいない。

小さい頃から勉強の得意だった私は、親類からすれば異常だった。

「橋の下で拾ってきたんじゃないか」と祖母が冗談で言ったことがある。

小学生の私にはあまり意味がわからなかったが、今思えば両親はなかなか酷いことを言われていた。


私は長男だったが、下の弟妹たちはそんなことはなかった。

醜いアヒルの子の逆バージョンみたいなミュータントである。

そもそもが何か異なっている。

だから家庭環境や教育環境に関係なく、私の考え方とかものの見方は、長じるにつれ家族のそれとは自然に大きく離れていった。

超が付きそうなほど合理的な私には家族の行動が理解できなかったし、家族も私のことが理解できなかった。

いつぞや、幼かった下の弟が母に考えていることを当てられて、「なんでわかるの?」と言ったことがあった。

私が「お母さんは子供の考えていることがわかるものなんだよ」と諭したら、母から「あんたの考えていることはわからないけどね」とツッコミが入った。

まぁそんなレベルである。


続く。。