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異呆人

毒にも薬にもならない呟き

仕事はスピードが命

仕事が早いとよく言われる。

どこへ行ってもそう言われるから、きっと早いのだろう。

作業速度も早いし、取りかかるのも早い。
いわゆる「すぐやる人」である。
私にとってそれは当たり前のことで、それで1冊の新書になったり、それを買い求める人がいる理由がわからない。
仕事をすぐやらず、何をしているというのだろう。
まさかネットサーフィンをしているというわけでもあるまい。
そう考えると、すぐやらないということは別の仕事をしているわけであり、つまりは優先順位の付け方を間違えているわけである。
特に期限が先だと後回しにする人が多いように思う。
期限というのはデッドラインであり、限界線である。
目安ではない。
期限が遠くても優先順位の高い、できるだけ早く取り組んだ方がいい仕事は沢山ある。
そこを勘違いしている人が多い。
 
私が仕事のスピードを意識するようになったのは、ただの経験故である。
だから業種や職種によっては当てはまらないことも多いと思う。
私が新卒で入った専門商社は、常時尋常ならざる忙しさだった。
しかも他の同期が増員や前任者からの引き継ぎで職務に入るのに、私だけは半年以上担当者不在のエリアへの欠員補充だった。
本社で座学の研修を2週間受けたあとは、OJTという名の下に現場に放り出された。
教えてくれる先輩は1人しかいない。
その人も自分の仕事があるし、快く教えてくれるようなタイプの人ではなかった(この人は私が入社して3ヶ月で辞めた)。
上司はサクッと帰る。
それは良いことではあるのだが、1人遅くまで営業所に残される新人の気持ちも考えてほしい、と当時は思った。
 
膨大な仕事量がある。
各々に期限がある。
とにかく捌かなければならない。
性格的にはやや完璧主義者で、本来はスピードより完成度を求めたい私だが、そんなことは言ってられない。
どうしたら効率良く、早く、1つ1つの仕事を完遂させられかを毎日考えた。
業界の事情もあり、完成度よりもスピードを重視された。
そうして1年足らずで、私の仕事は無駄を削ぎ落とした洗練された形態に行き着いた。
私のスピード重視の姿勢は、環境によりやむなく形成されたものである。
ちなみに他の人はそこまでしていなかった。
どこかで手を抜くのである。
だからクレームが起こったり、失注する仕事が増えたりする。
私がそうしなかったのは、ただのプライドである。
つまらない仕事をして、それが自分の仕事だと思われたくなかった。
 
仕事のスピードが上がり、取引先からも「早い!」と言われるようになるくらいに、初めて仕事が早いことのメリットを感じるようになった。
まず最も大きなメリットは、相手に信頼されるということである。
「この人に頼めば早く仕上げてくれる」という信頼感。
そして「自分のことを優先してくれている、きちんと考えてくれている」という信頼感である。
ビジネスは信頼によって成り立っている。
それは言うまでもない。
相手の仕事を早く仕上げることで、ビジネスにおける最も重要な部分を、比較的簡単に押さえることができる。
よく「忙しくて遅くなった」という人がいるが、それは「あなたの仕事は後回しにしていました」というのと同じである。
 
他のメリットとしては、生産性が上がる。
100点の仕事を5つ行うのと、80点の仕事を7つ行うのと、どちらが総点数が高いか。
四則計算ができれば簡単にわかる。
40点、50点を量産するような仕事は論外だが、あまり完成度にこだわり過ぎると、そのレベルが上がるにつれて費やす時間が2次関数的に増えてしまう。
あと、余裕ができる。
時間的、心理的な余裕である。
これがチェックを再度かけたりだとか、クオリティ以前の問題の単純ミスを減らすことにつながる。
 
だから私の仕事には装飾がない。
社内会議用の資料に美麗なグラフや表など必要だろうか。
必要な情報が伝われば十分だろう。
私は顧客向けの資料すら淡白に作ってしまうので、我ながらどうかと思うが、私の場合は弁舌ですべてカバーするのであまり問題はない。
資料は見やすいに越したことはないが、そこに時間をかけるくらいなら、もっと生産性のある仕事をしろと思ってしまう。
 
業種や職種によって求められる早さと精度は異なる。
だからそれは、そこに身を置く人がやりながらバランスを考えていかなければならない。
私も仕事を複数変えているが、職務内容によって早さと精度のバランスは変わっている。
その均衡点を見いだす作業は、経験と勘が教えてくれる職人技のようなものだ。
そうやって考えて仕事をしなければならない。
漫然と仕事をしていれば自分自身の成長はない。
それは安楽でも、最後に自分の首を絞めると思う。
 
その最初の会社に勤めていたとき、社内報の人物紹介に取り上げられたことがある。
営業だけでも200人近くいる中で、なぜ私だったのかわからない。
自分で書くのはプロフィールだけで、あとは営業所の人たちが他己紹介する趣向のものである。
上司は、いかに私が上司や取引先に怒られても、動じずに冷静に仕事をするかを茶化して書いていた。
事務員さんと後輩の書く欄には、「性格は?仕事ぶりは?」と2つ質問項目があった。
2人とも「性格:冷静、仕事ぶり:早くて正確」と書いていた。
これを読んだ人たちが、私のことをどんな人間だと思ったか、いまだに少し気になる。