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異呆人

毒にも薬にもならない呟き

街コンの思い出

昔、一度だけ街コンに参加したことがある。

当時、親友が彼女ができないと嘆いていた。

この友人は学生時代からフラれてばかりで、その度に慰めというか気晴らしというかに付き合っていた。

人間性は悪くない、むしろかなり良い奴なのだが、いかんせん全体的にもっさりしている。

例えば身嗜みでも鼻毛が出ていたりするし、オチのない話をすると学生時代からネタにされていた。

優しさとか誠実さとか、そういったものが目に留まるような長い付き合いの相手なら良さそうなものだが、そうなると「友達以上に見れない」らしい。

そのときもしばらく前にそう言われて、職場の同僚にフラれたばかりだった。

不憫である。

 

その親友としては、そのとき職場の同僚にフラれて気まずい思いをしたので、外に出会いを求めようと考えたらしい。

どこで調べてきたのか、街コンの話を持ってきた。

二人一組で参加するものらしく、私に一緒に参加しようと言ってきた。

私は彼女がほしいという気持ちはなかったが、そろそろ恋愛らしきものの一つや二つは経験すべきかと考えていたし、そもそも街コンなるものがどんなものか興味が湧いた。

なので、その場で参加を承諾した。

今から数年前、ちょうどアラサーと呼ばれる年齢に差し掛かった頃である。

 

それは平日の夜、都内の大型商業施設で開催された。

親友はシフト制の仕事なので、休みを合わせていた。

私も仕事が忙しくないときだったので、うまく切り上げて間に合わせた。

後から考えると、そういう平日の夜に都合の良い仕事の人が多かったかもしれない。

そういう意味では、街コンにおいて開催される曜日は重要だろう。

肝心の出会った相手と、なかなか休みが合わないようでは困る。

 

仕組みは単純だった。

参加者はリストバンドを付けて店に入る。

すると店のスタッフが適当にマッチングして席に案内してくれる。

飲み食いしながら話をし、お互い適当なところで切り上げる。

そしてまた次の店に移って同じことを繰り返す。

合計時間は3時間、参加費は確か6000円くらいで、飲食し放題だった。

回る店の順番や1回に費やす時間は自由で、一応スタッフが空いている店がどこか教えてくれたりした。

私と友人は1戦1時間×3回で臨もうと作戦を立てた。

ほとんどゲームをやっている気分である。

何人参加していたのかは知らない。

ただ店は8店舗くらいあり、どこに行くかいつ行くかによって出会える相手は変わる。

しかも相手を選ぶ機会はなく、どんな相手と出会うかは店のスタッフ任せなので運でしかない。

まぁそういうゲームである。

 

・1回戦

中華の店に入った。

料理の味は覚えていないが、やたらオーダーしてから料理が出てくるまでに時間がかかった。

スタッフも急に沢山客が来て、オーダーを捌ききれなかったのかもしれない。

入ったら席に通され、あとから女性陣が案内されてきた。

パッと見た瞬間、「若っ!」と思った。

それもそのはず、大学卒業前の学生だった。

当時の私もまだ若いうちに入ると思っていたが、さすがに女子大生には敵わない。

大人しめの可愛らしい子と、少し地味だがハキハキして感じの良い子だった。

何を話したらいいかわからなかったが、当たり障りなく学校の話とかアルバイトの話とかした気がする。

そもそも初対面の相手で制限時間1時間なのだから、当たり障りない話くらいしか出来ない。

当たり障りない話は仕事柄得意である。

少なくとも私はそこそこ楽しかった。

1時間で店を出るとき、連絡先の交換を申し出たら、すんなりOKしてくれた。

 

・2回戦

ビュッフェ形式の店に入った。

先ほど入った店で料理が出てくるのが遅く、あまり食べられなかったので、腹拵えしたかったこともある。

色気より食い気である。

関係ないが、海の見える雰囲気のある店だった。

案内されると、すでに女性2人が座っていた。

失礼な言い方になるが、あまり記憶に残らないくらい普通の女性たちだった。

いろいろ話を聞いていると、私たちよりほんの少し歳上で、医療事務をしている職場の同僚2人組だった。

アラサーとしていろいろ思うところあり、プレッシャーもあり、そんな中、街コンの話を職場の先輩から聞いて参加した、ということのようだった。

なんというか、全体的にテンションの低い人たちだった。

たぶんこういうコンパのような雰囲気が苦手なのだろうが、前向きに楽しもうというオーラが感じられない。

割とオールラウンドに話を合わせる私でも、心折れる展開である。

さすがにちょっと苦しいと思い、連絡先交換の申し出は控えた。

 

ちなみにこの店で我が親友は、途中無言で一時離脱した。

何事かと思ったら、パン用のバターをチーズと間違えて食べて悶絶してたらしい。

しかもその経緯を黙っておれず、女性陣の前で白状した。

素晴らしい茶目っ気である。

向こうは苦笑するしかない。

私も普段ならいじり倒すネタだが、さすがにかわいそうだと思い、しかし上手くフォローする方法もなく、結果的に下げるだけ株を下げた。

繰り返すが、人間性は良い奴である。

 

・3回戦

アメリカンバーみたいな店に入った。

いろんな意味で楽しんだので、心身共にお腹いっぱいだった。

最後は軽く行こうという、消化試合みたいなノリである。

残り1時間だったので、たぶんイベント自体にもそんな雰囲気があった。

ここも案内されると、すでに女性たちが座っていた。

仕事上がりなのか、綺麗めな格好をしていた。

さすがに格好から学生ではないとわかるが、それでも私より若いことは一目だった。

社会人2年目でウェディング関係の仕事をしている同僚2人組だった。

2人とも美人で、街コンに出てこなくても男なんかいくらでも寄って来そうな感じである。

まぁそれは人それぞれいろんな事情があるのだろう。

仕事の話とか趣味の話とか、必殺の当たり障りない話で適当に楽しんだ。

試合終了のゴングが鳴ったので店を出るとき、連絡先交換を申し出たら、こちらもすんなりOKしてくれた。

 

私は合コンなどもほとんど参加したことがなく、いわば男女交流の場におけるお喋りの練習試合のつもりだったが、よく考えたら仕事で散々お喋りしているのであまり問題なかった。

むしろ「営業の人だってすぐにわかります」と女性たちから言われる始末だった。

まぁ口の上手い私はペルソナの一つでしかないので、こういう場合では相手が私の本質を見誤る危険が高いのだが。

それはそれで別のお話である。

 

街コンにもいろいろあると思うが、このときは素直に参加して楽しいと思った。

男性目線では可愛い女性もたくさんいたし、瞬発的な対人スキルに自信があるなら、出会いの場としてのパフォーマンスはそれなりに高いと感じた。

運もあるかもしれないが、運だけが問題になるなら数撃てばいいだけだろう。

3時間で4人の女性と連絡先交換できたのだから、これがそういう目的のゲームだったら上々の戦果だろう。

もちろんそうではない。

当初の目的の一つ「街コンってどんなもの?」というのはわかったが、ここで終わっては「そろそろ恋愛らしきものをしてみようかな」は達成されない。

だから後者に向けて踏み出すため、私は場外戦を繰り広げることになる。

それもまた別のお話である。