異呆人

毒にも薬にもならない呟き

にらめっこ

今週のお題「給食」

 

給食といえば思い出すことがある。

献立ではなく、給食時間ににらめっこをした思い出だ。

バカな男子が牛乳を口に入れてにらめっこをしたのが、事の始まりだった。

そんなことをしたら決着がついたときに大惨事が起きるのは明らかなわけで、単に思慮の浅い小学生の悪ふざけである。

 

私が小学生のときは、給食の時間は前後左右の机4つを2対2で向かい合わせにして食べるのが決まりごとだった。

給食を食べる相手は強制的に決定される。

このにらめっこは基本的に机が向かい合わせる相手と行うのだが、なぜか私には女子としかした記憶がない。

私は変顔をするのが嫌で、そのくせ当時は笑いやすいタチだったのでよく負けていた。

牛乳はときどき吹いたが、ほとんどの場合は必死にこらえた。

 

なぜ流行ったのかわからないが、にらめっこは殊の外長く続いた。

毎日するわけではないので、細く長くといった具合だが。

そのうち、リスクを考慮して牛乳を口に含むことはなくなっていった。

牛乳を吹いた惨事の後始末は、子供ながらにも大変だと感じたのだろう。

 

ある時期、給食時間に私の向かいになったのは、ライバルとも言える女子だった。

小学生の頃の私は、スポーツ万能・成績優秀を地で行く生徒だった。

彼女はとあるスポーツのジュニアの世界では日本トップクラスで、勉強もよくできた。

関わるようになったのは、お互いの親友が両思いだとわかり、やれくっつけようと一緒に囃し立てたことがきっかけだった。

それから彼女は幾度なく私に突っ掛かり、テストの点数やスポーツテストの結果などで勝負を挑んできた。

 

にらめっこも、そうした勝負の一つだったのかもしれない。

私は黙って彼女を見る。

彼女も笑わせようとはせず、黙ってこちらを見る。

文字通りにらめっこで、息詰まるような空気があった。

その真剣な空気がシュールな可笑しみに感じられたとき、どちらかが笑うのだった。

勝敗はほとんど5分だったと記憶している。

他の子とは違う、一風変わったにらめっこだった。

 

いつしか彼女は給食時間以外にもにらめっこを仕掛けてくるようになった。

私はいつも応じた。

彼女は私に好意があるのだろうかと思ったこともある。

でも彼女は、私に好意がある他の女子をけしかけてきたり、そうと思えないことも同時にした。

私は私で、他に好きな女子がいた。

 

だが、私にとって彼女とのにらめっこは、だんだんと特別なものに変わってきた。

彼女がどう思っていたのかは、最後までわからなかった。

にらめっこというより、ほとんど見つめ合っていただけのような気もする。

不思議なことに、周りはそれを囃さなかった。

当人たちにも周りにも、わからなかったのだろう。

二人の間にあるものが、友情なのか恋愛感情なのか。

まぁ、小学生だったことだし。

 

給食時間、向かい合わせた机の向こう側、真剣な眼差しの彼女。

それがこらえきれないといった笑顔に変わる。

玉手箱の中の素敵な思い出である。