異呆人

毒にも薬にもならない呟き

梅の香りはわからなかった

彼女と湯河原に梅を見に行った。

以前から約束していたのだが、私に仕事の予定が入ったので延期していた。

先日からの風邪で体調は一進一退だったが、今回を逃せば見頃は過ぎるだろう。

何とか行こうと思った。

昨夜は夜中に発熱してドタキャンもやむなしと思ったが、何とか持ち直してくれた。

 

昼過ぎに駅で落ち合い、バスで幕山公園まで向かう。

会場に着くと、梅の花が綺麗に咲いていた。

梅を見に行くのは始めてだが、一斉に咲いて一斉に散る桜とは違い、花見の期間が比較的長い。

その分、咲き乱れるような桜の華やかさはない。

趣きと香りを楽しむものだろう。

ちなみに彼女は梅の香りがすると言っていたが、風邪で鼻づまりの私にはほとんどわからなかった。

 

露店でご当地B級グルメの坦々焼きそばを食し、梅林を通って幕山山頂を目指した。

彼女とはこれから一緒に山登りを始めようと話していた。

トレッキングシューズやウェアなども準備した。

幕山の標高は600mと少しなので大したことはないと思ったが、慣らす意味も込めて装備した。

 

登り始めは大したことないと思っていたが、結果的にそこそこのトレッキングだった。

少なくとも、スニーカーは避けて正解だった。

彼女が一緒だったので、途中何ヶ所か休憩しながら登った。

私も体力が落ちているとはいえ、それでも同年代の男性の平均よりは動ける自信がある。

女性と山登りしたのは始めてだったが、やはり体力の差は大きいなと実感した。

 

山頂まで1時間弱歩いたと思う。

幕山山頂は少し開けた原っぱになっており、レジャーシートを広げるにはもってこいの場所になっていた。

真鶴半島も見渡せ、途中危ない場所も少なく、良い運動にもなるので、最初に二人で登る場所としてはうってつけだった。

下りは砂利で滑りやすい場所があり、彼女は難儀したようだった。

私は手を貸しながら慎重にゆっくり下りた。

 

彼女と一緒に山登りを始めると書いたが、山登り自体は何度かしたことがある。

屋久島の杉を見に行ったり、新潟にいたころは弥彦山に登ったり、山ではないが尾瀬を歩いたり。

いずれも同性の友人とや一人で行ったもので、相手との体力差を考えたことはなかった。

そもそも装備もランニング用のみで、ジョギングシューズで屋久島を駆け回った。

結局一番大切なのは中身というか体力で、形なんて整ってなくても何とかなるものである。

 

あんな力まかせに山を登った頃と、女性の手を引きながら山を登る今を比べて、自分は変わったなと思った。

それが良いとも悪いとも思わない。

ただ、選ばないことを選んでたくさんの選択肢を残すことをやめ、強引にでも選択をしていろんな可能性を諦めることと引き換えに、普通と安定を手に入れようとしているだけである。

自分が自分にとって何者にもなれなくても、誰かにとっての何者かになれるなら、それで十分過ぎるではないか。